9月12日、13日の2日間、奈良県山添村の名阪スポーツランドでD.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2026第7戦近畿大会MRAカップが開催された。約2カ月のインターバルを挟んだ後半戦の初戦は、例年の残暑と砂埃ではなく雨から始まった。水はけのいいサンドコースにも水たまりが残り、深く掘れた轍が日曜の決勝まで続く。ダートフリークのサポートライダーにとっては、夏の練習量と、路面を読む目を試される週末になった。
【D.I.D全日本モトクロス選手権サポートチーム&ライダー】
■IA1
#1 大倉由揮(Honda Dream Racing Bells)
#2 ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)
#3 大城魁之輔(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)
#4 大塚豪太(T.E.SPORT)
#7 浅井亮太(BLUCRU YSP浜松BOSSRACING)
#14 道脇白龍(TEAM KOHSAKA with トータルカーサービスK)
#44小島庸平(Bells Racing)※スポット参戦
#47 池田凌(Bells Racing)
#54 道脇右京(バイカーズステーション金沢Racing)
#97 内田篤基(Team Kawasaki R&D)
■IA2
#46 吉田琉雲(Bells Racing)
#51 柳瀬大河(Honda Dream Racing)
#55 田中淳也(YAMAHA BLUCRU RACING TEAM YSP浜松BOSSRACING)
#58 今岡駿太(Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS)
#60 松木悠(Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS)
#122 鴨田翔(Kawasaki PLAZA 東大阪)
#02 島袋樹巳(Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS)
■レディース
#1 川井麻央(T.E.SPORT)
#2 箕浦未夢(Team ITOMO)
#4 穂苅愛香(BLU CRU TOMOレーシング)
#33 本田七海(TEAM KOH-Z)


今大会では、DFGサポートライダーである大城魁之輔や箕浦未夢、#33本田七海が2027年モデルのDFGウエアを着用。鮮やかなカラーリングで観客の目を引きつけた。
IA1クラス
ウィルソンvs.大倉、同点のチャンピオン争いは大倉がリード
15分+1周の3ヒート制で行われたIA1クラス。ダートフリークサポートライダーの#1大倉由揮(Honda Dream Racing Bells)と#2ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がシリーズランキングトップに同点で並ぶなか迎えた今大会は、2人の直接対決となった。

ヒート1は、サポートライダーの独壇場となった。スタートで前に飛び出した大倉を、#7浅井亮太(BLUCRU YSP浜松BOSSRACING)と#54道脇右京(バイカーズステーション金沢Racing)が追う展開。浅井がトップの背中をとらえていたが、大倉が少しずつ引き離して主導権を握った。一方、スタートで前に出られなかったウィルソンは中盤にこのヒートの最速ラップを刻んで巻き返しを図ると、2番手にまで浮上する。しかしレース終盤に転倒し3番手に後退。#3 大城 魁之輔(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が2番手にポジションを上げた。「このコースは必ずしも一番速いライダーが勝つコースではないからね」とウィルソンが語るように、抜きどころが少ない同コースでの追い上げに苦戦を強いられた。結果、大倉、大城、ウィルソンという順でフィニッシュ。さらに4位に#4大塚豪太(T.E.SPORT)、5位に#97内田篤基(Team Kawasaki R&D)、6位に#47池田凌(Bells Racing)、7位に浅井が続き、上位7台をサポートライダーが占める結果となった。

ヒート2は開始直後に主役が入れ替わる。好スタートを決めた大倉を1周目のうちにウィルソンがかわすと、そのままペースを上げて独走態勢へ。大倉も粘り強く追い上げるが、レース中盤に転倒を喫し差が大きく開いてしまう。ヒート1で悔しさを滲ませたウィルソンは、3ヒートを通じて最も速いラップタイムを記録、見事優勝を獲得した。2位大倉、3位大塚、4位大城、5位浅井と、このヒートは上位5台すべてがサポートライダーという顔ぶれになった。

ヒート3は、スポット参戦を果たしたレジェンド#44小島庸平(Bells Racing)がなんとホールショットを獲得し会場を沸かせた。しかしすぐに大倉がトップに浮上。さらにウィルソンも抜け出し、2人の一騎打ちが繰り広げられる。数秒の間隔を保ったまま大倉がレースをリードする中、ウィルソンも大倉の背後に迫りプレッシャーを与え続ける。仕掛けるかと思われたレース終盤、ウィルソンが転倒。すぐに復帰し追い上げるが惜しくも届かず、先にチェッカーを受けたのは大倉だった。その差はわずか1秒384。「ジェイ選手と一対一で戦えて、1日をまとめるとすごく良い日になった」と大倉が振り返った。3位には大城、4位に池田が入り、スタートで出遅れた大塚も6位まで挽回。大倉はランキング争いでもリードを得て終盤戦へと向かうことになる。
#1 大倉由揮
「夏のインターバルは名阪で練習を重ねたり、タイ選手権に行かせてもらったり、中日本選手権も出場して、うまくレース感を保てていたと思います。ただ、中日本選手権の直前にぎっくり腰になってしまって、そのレースに出場すること自体不安はあったんですが、当日は案外腰が動いてくれて良かったです。今日は自分の転倒で2位になってしまった場面もありましたが、総合優勝にまとめることができてよかったです。これだけラインが多くて荒れた路面だと、まだまだジェイさんに勝つには足りないと思わされる部分もたくさんありました。ただ、確実に戦えるようにはなってきているので、自信はあります。第8戦の前にまずは3週間後のネイションズ。この数年で積んできた経験を活かして、チームを引っ張っていきたいです」
#2 ジェイ・ウィルソン
「正直なところ、今日という日をどう受け止めればいいのか自分でもよくわからない。チャンピオンシップを追いかけている立場としては良い結果ではなかったね。最後のヒートのバトルにしても、正直ずっと彼の後ろについて様子を見ている形だった。周回遅れが出てきた時に差が開いたり、どちらかがミスをしたりして、そのたびにすぐ差を詰め直す展開で、後ろについて相手のミスを待つのが自分の狙いでもあったけど、結果的にミスをしたのは自分の方だった。けど、ライディング自体は本当に良かった。シーズン序盤はウエイトを持ち上げることすらできず、一戦一戦をやり過ごすだけだったから、“自分らしい自分”に戻れたと感じられたのは、今シーズン初めてだと思う。残り2戦も楽しんでいこうと思うよ」
#3 大城魁之輔
「やっぱりスタートが悪いのと、そのスタートの悪さをさらに最大化させるような1〜2周目になってしまったことで、完全に自分を悪循環に陥らせてしまいました。序盤ですぐに上がっていかないと、前の2人は見えてこないですね。この課題に対してインターバルは国内でトレーニングをしてきて、調子自体は全然良かったのですが、まだ足りていないということですね。次戦の前にまずはネイションズがあります。初めてなので、無知を武器にして全力を出し切ってきます」
#4 大塚豪太
「インターバル期間の間、1ヶ月ほど関西に住み込んで名阪に通って、自分の足りないところを突き詰めてきました。出てきた課題をすぐにクリアできるものでもないので、もがき苦しんで、ちょっと良くなったかな、そうでもないかな、の繰り返しでした。苦しかったですけど、それも覚悟していました。今までも全力でやってきて手を抜いてきたわけじゃないので、そこからレベルアップしようと思ったら痛みは伴います。次こそはヒート優勝できるように頑張ります」
IA1 総合順位
| 総合順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 |
| 1位 | #1 | 大倉由揮 | Honda Dream Racing Bells |
| 2位 | #2 | ジェイ・ウィルソン | YAMAHA FACTORY RACING TEAM |
| 3位 | #3 | 大城魁之輔 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM |
| 4位 | #4 | 大塚豪太 | T.E.SPORT |
| 5位 | #47 | 池田凌 | Bells Racing |
| 7位 | #97 | 内⽥篤基 | Team Kawasaki R&D |
| 8位 | #7 | 浅井 亮太 | BLUCRU YSP浜松BOSSRACING |
| 14位 | #54 | 道脇右京 | バイカーズステーション金沢Racing |
| 17位 | #44 | 小島庸平 | Bells Racing |
| 20位 | #14 | 道脇白龍 | TEAM KOHSAKA with トータルカーサービスK |
IA2クラス
柳瀬が他を圧倒する強さで2勝をあげる

30分+1周の2ヒート制で行われたIA2クラス。ヒート1は柳瀬がホールショットを奪うと後続を寄せ付けず、一度もトップを譲ることなく最後まで走りきった。「1周の繋がりがすごく良くて、本当に乗れている日のライディングだった」という手応えそのままの独走劇を披露した。 2位には#240 横澤 拓夢(KawasakiPLAZA盛岡 TKMmotorsports)、3位には#46 吉田琉雲(Bells Racing)が入賞。吉田はレース中盤で手首に怪我を負い、痛みを我慢しながらのレースとなった。しかしレース中にはクラス最速のラップタイムも記録する速さを見せ、見事表彰台を獲得した。対照的に苦戦を強いられたのが田中だ。スタート直後の2コーナーでエンストして一気に10番手台まで後退、さらに追い上げの最中に目の前で転倒したライダーに突っ込む形で自身も転倒。田中は「2回転んで、最低限でしたが4位まで上がることができた」と振り返る通り、大きなペースダウンがありながら入賞圏内にまで追い上げる粘りを見せた。

ヒート2も柳瀬がスタートから抜け出すと、序盤に後続を引き離して独走態勢を築く。その後も危なげない走りでこの日2勝目を挙げ、第6戦北海道千歳大会に続く2大会連続の完全優勝を成し遂げた。一方、田中は序盤に2番手へ浮上したものの、残り5分というところでジャンプに引っかかり、エンストしてしまう。再始動に手間取る間に2台の先行を許してしまうが、それでも気持ちを切り替え、残り2周で2番手を奪い返した。鴨田が6位、松木がヒート1から5つ順位を上げて7位、今岡駿太が12位でフィニッシュ。ヒート1で3位に入った吉田はレース中に手首を痛めた影響でヒート2を欠場した。総合順位は柳瀬が1位を獲得し、ランキングでもリードを広げる形となった。
#51 柳瀬大河
「インターバルは基本的に日本にいて、仲間と一緒に練習をしたり、名阪にも足を運んで乗り込んでいました。その中で初めてタイのレースにも出させてもらえて、長いインターバルの期間にレース経験を積めたのは良かったです。細かいミスは多少ありましたが、このコンディションにしては大きく崩れることなく、冷静に走れたかなと思っています。この調子を維持していけるよう頑張ります」
#55 田中淳也
「正直めちゃくちゃ悔しいです。ヒート2はスタートでそこそこ前に出ることができて、早い段階で2番手に上がることができましたが、トップのライダーが速くて離される一方でした。普段の練習は調子が良くて、この夏も450ccに乗ってトレーニングを積んで良い感覚を掴めていたので、それをどうレースで発揮するかが課題ですし、実力でめちゃくちゃ負けているとは思っていません。何が起こるかわからないのがレースだと思うので、自分を諦めずにトップを目指して戦っていきたいです」
IA2 総合順位
| 総合順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 |
| 1位 | #51 | 柳瀬大河 | Honda Dream Racing |
| 2位 | #55 | 田中淳也 | YAMAHA BLUCRU RACING TEAM YSP浜松BOSSRACING |
| 5位 | #122 | 鴨田翔 | Kawasaki PLAZA 東大阪 |
| 8位 | #60 | 松⽊悠 | Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS |
| 9位 | #58 | 今岡駿太 | Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS |
| 14位 | #46 | 吉田琉雲 | Bells Racing |
| 28位 | #02 | 島袋樹巳 | Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS |
レディースクラス
サポートライダーが奮闘、川井が7連勝を達成
レディースクラスは日曜に1ヒート制で実施された。土曜の予選でトップに立ったのは、サポートライダーの#33本田七海(TEAM KOH-Z)。3番手には開幕から無敗の#1川井麻央(T.E.SPORT)がつけた。クラス内のベストラップタイムを刻んだのは川井で、上位3人が1秒以内にひしめく僅差のまま決勝を迎えることとなった。

本田は、決勝のサイティングラップ直前にプラグがかぶってしまい、プラグ交換をしたことでサイティングラップにいけないというアクシデントがあった。不安を抱えたままゲートに着くことになったが、1周目で4位につける。追い上げ中に3度の転倒を喫した。スタート直後にトップへ立った川井は、水たまりでマシンが水を吸い込むほどの状況の中でも、一度も並ばれることなく先頭を守り抜いた。「もっと横に顔を出されると思っていた」と振り返る通り、背後につけた#14川上真花との差は最後まで1秒を切る際どさだった。それでも集中を切らすことなく走りきり、今季7勝目とともに開幕からの連勝を7へと伸ばした。3番手争いでは、走行上3位でチェッカーを受けた#2箕浦未夢(Team ITOMO)が音量規定違反により5順位降格となり8位に。これにより本田が繰り上がって表彰台に立ち、サポートライダーが1位と3位を分け合う形となった。#4穂苅愛香(BLU CRU TOMOレーシング)は13位でレースを終えている。
#1 川井麻央
「インターバルは毎週名阪に来て乗り込んでいました。今回は水たまりが深くて、エアフィルターも水を吸ってしまうほどの状態でした。序盤からマシンの調子が悪くなっているのが分かっている中でも、なんとか頑張って走り切りました。走りながら、後ろから来ていた川上選手はヤマハストレート後のセクションが速いことに気づけたので、そこを最後までしっかり締めて走って、守り切れました。次は地元コースですが、油断せず、一勝を狙っていきたいと思います」
#33 本田七海
「とにかく轍が深くて、硬い。3回目に転倒した場所も、直前にすごい雨が降ったことで一度水が抜けていたところに、また上から水が流れ込んできていたことで轍そのものが見えない状態になっていました。路面状況の判断が本当に難しくて、転倒を重ねてしまいました。スタート前にはプラグがかぶってサイティングに行けず、自分の気持ち的にも不安が残っていました。地元大会ですし、ここだけは絶対に落としたくないという気持ちで走っていたので、悔しいです。勝ちからもだいぶ離れてしまう結果が続いているので、次こそ優勝したいです」
レディースクラス総合順位
| 総合順位 | ゼッケン | ライダー名 | チーム名 |
| 1位 | #1 | 川井麻央 | T.E.SPORT |
| 3位 | #33 | 本田七海 | TEAM KOH-Z |
| 8位 | #6 | 箕浦未夢 | TEAM ITOMO |
| 13位 | #4 | 穂苅愛香 | BLU CRU TOMOレーシング |
IA1・IA2・レディースの3クラスすべてでサポートライダーが総合優勝を飾った第7戦。次の第8戦 TOKIO INKARAMI Super Motocrossは、10月10〜11日、埼玉県のオフロードヴィレッジで開催される。大幅なレイアウト変更でジャンプを多用したコースになると予告されており、通常の全日本モトクロス選手権とはまた違う特色のレースとなるだろう。ダートフリークサポートライダーたちがどう攻略するのか、その走りに注目していただきたい。