バイク メンテナンス

オフロードバイクのデカール貼り、基礎の基礎

愛車の見た目を自分好みにガラリと変えてみたい、あるいは林道デビューしたいけれど転倒して愛車が傷だらけになるのが怖い。オフロードバイクに乗っていると、そんな悩みや願望を持つことはないでしょうか。特に初心者の方や、新車や程度の良い中古車を手に入れたばかりの方にとって、バイクを傷つけてしまった時の心理的ダメージは計り知れません。

オフロードバイクの世界には、そんなイメチェンとボディ保護を一挙に解決する特有の文化があります。それがデカール貼りです。ここでは塗装いらずで愛車を魅力的なルックスに仕上げるデカールカスタムの世界と、初心者でも失敗しない貼り方のコツをご紹介します。

なぜオフロードバイクは塗装ではなくデカールなのか

ロードバイクのカスタムでは塗装が主流ですが、オフロードバイクではあまり一般的ではありません。なぜならオフロードバイクは転倒が日常茶飯事で、プラスチックの外装は曲がることを前提とした柔らかいもののため塗装がのりづらく、剥がれやすいのです。そこで発展したのが、樹脂パーツの上に分厚いステッカーを貼るデカールグラフィックという文化。これには単なるドレスアップ以上の大きなメリットがあります。

最大のメリットは高い保護性能にあります。オフロード用のデカールは一般的なステッカーとは比較にならないほど保護フィルムが分厚く、頑丈に作られています。これが外装にとっての鎧となり、林道の枝、跳ね上げた泥や石、そして転倒時の擦れからプラスチックパーツ類を無傷で守ってくれるのです。傷を隠すのではなく、傷つく前に貼るのが賢いオフロードライダーの選択といえます。

またイメチェン効果も見逃せません。フルキットを貼れば、まるで別のバイクに乗り換えたかのようなインパクトがあります。飽きたら剥がして別のデザインに貼り替えるだけで、何度でも新鮮な気分を味わえます。

さらにリセールバリューを維持できる点も重要です。デカールが身代わりになって傷を受け止めてくれるため、剥がせば下の外装は新品同様のまま保たれます。将来バイクを手放す際も、査定額への悪影響を防ぐことができるのです。

選ぶ楽しみがあるデカールの種類

ダートフリークでは、古くからアメリカのデカールブランドであるファクトリーFXのキットを販売してきました。ファクトリーFXとコラボレーションして日本でしかラインナップされていないトレールバイク用のデカールを発売したり、近年ではダートフリークのハウスブランドであるZETA RACINGのデカールも販売しています。

あえて薄い素材を使用するCT125ハンターカブ用ZETA RACINGデカール

どのブランドでも一般的なレーサー用のデカールグラフィックはだいたい揃っていて、ファクトリーFXでもホンダCRF、ヤマハYZ、カワサキKX、スズキRM-ZやKTMなどのキットがラインナップされています。続いて人気なのが、前述したトレールバイク向けです。ホンダCRF250L、ヤマハセロー250、カワサキKLX230用などがラインナップされています。変わったところとしてはZETA RACINGからホンダCT125ハンターカブ用のオリジナルキットもリリースしています。特にハンターカブ向けはレーサーほどの保護性能が求められないこと、外装の形状が複雑で厚手のデカールは貼りづらいことなどから、0.35mmの薄めの素材を使用して、デカール初心者にも貼りやすいものになっています。

綺麗に貼るためのテクニック

デカール貼りは難しそうと思われがちですが、適切な道具を使えば自分で行うことも十分に可能です。

残った糊や、油分をキレイに除去しなければいけません

必要な道具として、まずは脱脂のためのパーツクリーナーやシリコンオフが挙げられます。樹脂パーツの油分を完全に除去しないとすぐに剥がれてしまうため必須です。ヘアドライヤーの使用については、必須ではありませんが用意しておくと安心です。基本的にファクトリーFXやZETA RACINGのデカールは伸縮性に優れているため、熱で伸ばさずとも曲面にうまく貼れるものが多いのです。下手にドライヤーで熱を加えると伸びすぎてしまって合わないこともあります。ちなみにプロはヒートガンを使いますが、より高温になりやすくデカール素材があっという間に伸びてしまうため無理に使用する必要はないでしょう。特に、セローやCT125ハンターカブ用のデカールキットはドライヤーを使わずドライ貼りすることを前提にカットされているので、基本的にドライヤー類はなくてもかまいません。

ただ、もし古いデカールや純正ステッカーを剥がす必要がある場合は、ドライヤーで温めて糊成分を柔らかくしながらゆっくり剥がすようにしましょう。それでも古いデカールの糊が残ってしまうものですが、この糊成分を丁寧に除去しなければデカールの仕上がりが凸凹になってしまいます。おすすめは、遅乾性のパーツクリーナーで糊を溶かし、プラスチックを傷つけないようにヘラなどで糊成分をこそぎ落としていく方法です。コツは、根気です。

準備ができたら貼り付け作業に移ります。薄いステッカーは洗剤水を使って水貼りをすることで位置合わせをしやすくする場合もありますが、厚手のオフロードバイク向けデカールは粘着力が強く何度か貼り直しがきくため、水を使わずそのまま貼るドライ貼りが主流です。購入したキットの説明書に従って作業を進めてください。

まずはいきなり全ての剥離紙を剥がさず、端だけめくって位置を合わせます。剥がした剥離紙の一部をハサミで切り取り、粘着面に貼り付けて持ち手にすると、指紋をつけずに作業できます。位置が決まったら、中心から外側へ向かって、親指やスキージで空気を押し出すように圧着していきます。

伸ばして貼る場所

サイドゼッケンやシュラウドなどの曲面は難しい箇所です。平面のシールを球面に貼ろうとするとどうしてもシワが寄りがちですが、貼る面の形状によって貼り方が変わることを覚えておくといいでしょう。凸面であれば平面のシールは生地が余るのではなく足りない方向になるわけですが、この足りない部分を手で丁寧に伸ばしていくことで帳尻を合わせます。ここでドライヤーを当てて生地を柔らかくすると、キレイに貼ることができます。

最大の難所は凹面です。こちらは生地が余る方向になるので小じわを丁寧に圧縮していくことになりますが、ドライヤーで温めることで生地は縮みやすくなります。多くの失敗は、ドライヤーを伸ばすためだけに使ってしまうことから起きます。温めることで生地はやわらかくなり、伸びも縮みもする。この特性をうまく使うことができると、デカール貼りが捗りますよ。

 

剥がれ始めてもメンテナンスで蘇る

強い接着力を持つグラフィックデカールですが、プロライダーともなると強力なニーグリップで1レースしかもたないなんてこともしばしば。だいたい、デカールの端がめくれてきてしまい、ダメになってしまう例が多いですね。洗車時に高圧洗浄機を使う際は、デカールの端に対して逆らう方向から水を当てないように注意が必要です。強い水圧でめくれてしまうことがあります。

ただし、もし端が浮いてきてしまっても諦める必要はありません。GPクリヤーなどのゴム系接着剤で補修することができるのです。まずはデカールを貼るときと同様に、汚れた樹脂表面やデカールの糊面を丁寧に脱脂し、劣化した糊成分を除去します。剥がれたデカールに折れ目などがついてしまっていることが多いので、ドライヤーで温めて形を整えてなじませた上で、樹脂パーツとデカールの両面にゴム系接着剤を塗布。そのまま乾燥させてから、圧着します。

剥がれてしまったところの糊成分をパーツクリーナーで掃除します

溶剤系の接着剤を塗布、乾燥させます

ドライヤーなどでシワを伸ばしながら、貼り付けます

このとおり、キレイに補修することが可能です

傷だらけだった外装が見違えるように綺麗になったり、新車の外装をガッチリ守ってくれたりと、デカールには多くのメリットがあります。何より、ガレージに佇む自分だけのカラーリングの愛車を見た時の満足感は、走る楽しみを何倍にも膨らませてくれます。

失敗しても、最悪の場合はプラスチックの外装を買い替えればリセットできるのがオフロードバイクの良いところです。UFOなどのプラスチックメーカーからは、純正よりコストパフォーマンスに優れる外装も発売されています。あまり神経質にならず、プラモデル感覚で楽しんでみてください。次の週末は、愛車の衣替えに挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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