林道で浮き石に前輪を取られて、思わず足を出した瞬間に膝へ変な方向の力がかかった――そんなヒヤッとした経験、アドベンチャーバイク乗りなら一度はあるかもしれません。アドベンチャーバイクはモトクロッサーほどの危険性は感じにくい乗り物ですが、車体の重さと足の取り回しの難しさが組み合わさることで、油断した瞬間に「一生もの」の膝の怪我をしてしまうケースが数多く報告されています
膝の靭帯は、こんな場面でやる
世界には200kg超の重量級アドベンチャーバイクでハードなオフロードへ突撃してしまう方々も稀にいらっしゃいます。彼らは当然プロテクターを万全に装着していますが、そこまで土の上でスピードを出さない、という方々にも今回はニーブレースをおすすめさせてください。靭帯損傷は意外なほど「地味な場面」で起こっているのです。

アドベンチャーバイクでハードなオフロードに突撃してしまう人の世界代表ポル・タレスさん PHOTO/ヤマハ
たとえば、林道を走行中、停車寸前に滑りやすい路面に足を着いた瞬間、足が外側に滑って車重が膝に乗る。膝関節がねじれる方向に強い力がかかって、ACL(前十字靭帯)が完全断裂、MCL(内側側副靭帯)も損傷、半月板まで損傷――というのは、アドベンチャーライダーが繰り返し報告する典型シナリオの一つ。低速でも、足の置き場と車重の角度次第で、靭帯はあっけなく傷つきます。
ほかにも、低速の取り回しでバランスを崩し、傾いた車体を支えきれずに転倒。倒れた車体と地面のあいだに足が挟まれ、膝より下が動けないまま、車体に押された大腿部だけが動いて関節がねじれてしまうなど。リッタークラスの200kg超の車重が、一気に膝関節の側副靭帯に集中する恐ろしさを想像してみてください。

車重が膝にのる転倒の仕方は、膝をひねる可能性大です!
共通しているのは、どれも「派手な転倒」とは違う、ロースピードの状況で起こっていること。そしてもうひとつ、被害体験の多くで、ライダーがニーブレースを装着していなかった、あるいは「アドベンチャーツーリングだから」とプロテクションを軽くしていた、という後悔がセットで語られていることです。
前十字靭帯(ACL)をやると、何が起こるか
「靭帯のひとつくらい」と思っているとしたら、その認識は改めた方がいいです。前十字靭帯――いわゆるACLは、一度切れると自然には絶対に治りません。再建には、自分の太もも裏側にある半腱様筋腱(ハムストリングを構成する腱)や、膝の前面の膝蓋腱から組織を取って関節内に移植する手術が必要です。
入院は1〜2週間、松葉杖が3〜4週間、スポーツ復帰の目処は半年から1年。リハビリを真面目にやって戻したとしても、走力やジャンプ力が手術前と完全に同じレベルまで戻ることは難しいと言われています。さらに厄介なのは、一度ACLをやった膝は反対側の膝もACLを損傷するリスクが高まること。そして、若いうちにACLをやった人は、数十年後に変形性膝関節症を発症する確率が、健常者と比べて大きく上がる傾向があります。
つまりACL断裂は「治って終わり」ではなく、その後の人生まるごとに影響を残す怪我。バイクに乗るのを諦めたり、好きなスポーツから引退したりする原因にもなりえます。経験者に話を聞けば、ほぼ全員が「もう絶対にやりたくない」と口を揃えます。比較的軽傷で完治しやすい内側側副靭帯損傷であっても、日常生活に支障がでるし痛みも強い。世間一般に「重傷」と思われがちな骨折よりも重い可能性が潜む受傷なのです。
「トゥーマッチ」じゃない。膝は守った分だけ得をする
ニーブレースというと、「アドベンチャーツーリングで大袈裟じゃないか」「モトクロスじゃないんだから」と感じる人もいるかもしれません。装着すれば多少の違和感はあるし、足とタンクのクリアランスは変わるし、価格も決して安くはない。
ただ、「もし1回ACLをやってしまったら、その後の人生で失うもの」と、「ニーブレースの数万〜十数万円+着用の手間」を天秤にかけたら、明らかに前者の方が重い。趣味で乗っているからこそ、一発で趣味を失わないためのリスクヘッジは、むしろ大袈裟なくらいでちょうどいい。林道に入る予定があるなら、ニーブレース。これが「転ばぬ先の杖」の発想です。
価格を抑えつつ、膝の保護性能はしっかり
K4 2.0は、PODニーブレースのなかでもボリュームゾーンを担うスタンダードモデル。グラスファイバー製のメインフレームと、独自のHuman Motion®ヒンジで、ACLや側副靭帯にかかる過伸展・横方向の力をしっかり受け止める基本性能を持っています。CEテスト認証取得のフルカバーインパクトガードも着脱式で備え、膝を守るという機能の本質はK8と同じ。

POD
K4 2.0 ニーブレース 左右セット
¥91,300(税込)
https://www.dirtfreak.co.jp/products/detail/C3174po-0815742013573/
カーボンフレーム+CEレベル2の最上位モデル
K8 3.0は、PODの最上位ニーブレース。メインフレームに鍛造カーボン(フォージドカーボン)を採用することで強度を確保しています。新設計の「アダプティブロワーフレーム」は、すねの両側を剛性コンポジット製ストラットで支える構造で、回旋によるケガのリスクと重症度を最大54%低減する設計。CEレベル2認証の「re((SPONSE))インパクトシステム」も搭載。
そしてアドベンチャーバイク用途として効いてくるのが、装着感とフィット感の高さ。林道ツーリングは1日6〜8時間バイクに乗りっぱなしになることが普通で、短時間のモトクロスとは前提が違います。ヒンジパッドの調整パーツが豊富で、自分の脚に合わせて細かくセッティングできるため、ずっと着けていてもストレスが少ないのです。予算が許すなら、アドベンチャーバイク用途ではK8 3.0を選ぶほうがQOB(クオリティ・オブ・バイクライフ)が上がる可能性大。

POD
K8 3.0 ニーブレース 左右セット
¥156,200(税込)
https://www.dirtfreak.co.jp/products/detail/G5069PO-4547836520884/
アドベンチャーバイクならではの、装備セッティングの注意点
ニーブレースを買うと決めたら、もうひと押し気をつけたい点が2つあります。
ニーブレースは、上下のカップが脚にしっかりフィットしているからこそ機能します。モトクロス用の丈が高いブーツなら、ブーツのトップでブレースの下端を抑えてくれるので走行中もズレません。
一方、丈が低めのアドベンチャー系ブーツだと、ブレースの下端がブーツの中におさまらず、走行中に少しずつ下にズレ落ちる現象が起こります。これでは膝のお皿の上ではなく、太ももの中ほどを守るだけのパーツになってしまい、肝心の関節を保護できません。
解決策は、長めのアドベンチャー系ブーツを選ぶこと。ダートフリークが展開するDFG「アドベンチャーWPブーツ」は、ツーリングブーツでありながら、ニーシンガードとニーブレースの装着に明確に対応している数少ない一足です。

DFG
アドベンチャーWPブーツ
¥33,000(税込)
https://www.dirtfreak.co.jp/products/detail/dgg4732-4547836517198/
オフロードブーツ平均1.5kgに対して約1.1kgと軽く、防水(耐水圧20,000mm/透湿性14,100g/m²)、ふくらはぎ周囲〜47cmまで対応、4E相当の幅広・甲高設計と、アドベンチャーツーリングに必要な要素はすべて押さえられています。アドベンチャーバイクで林道に入るライダーが選ぶブーツとして、相性は抜群です。ニーブレースに慣れたライダーからすると、
また、意外と見落とされがちなポイントですが、ニーブレースは膝の内側にもフレームがはみ出しています。アドベンチャーバイクの大きな車体でニーグリップしようとすると、このフレームがタンク内側に直接当たって、塗装をガリガリ削っていきます。そこでおすすめしたいのがこちら。

DFG
ニーブレースヒンジカバー
¥2,860(税込)
https://www.dirtfreak.co.jp/products/detail/dgc3056-4547836378324/
ニーブレースの膝内側に挟むクッションで、バイクとニーブレースのヒンジをカバーしてくれます。
膝の靭帯は、軟骨や筋肉と違って、損傷した部分が元通り再生することはありません。再建手術をしても完全には戻らない。そしてアドベンチャーバイクは、見た目より圧倒的に膝のリスクが高い乗り物です。
スポーツを前提としたモトクロスやエンデューロのほうがたしかに受傷の可能性は高いでしょう。しかし、ツーリング用途のアドベンチャーバイクでも、ニーブレイスまで装備のレベルを上げておく意味は十二分にあります。備えあれば憂い無し、相応の値段ではありますが検討してみてはいかがでしょうか。