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「取れたら、辞めるつもりだった」最高齢SX王者ケン・ロクスンが歩んだ道と、スズキへの帰還

2026年AMAスーパークロス450SXクラスを、32歳・最高齢で制したケン・ロクスン選手。しかもドイツ人ライダーとして史上初の戴冠です。そのタイトル獲得の報告にロクスン選手はスズキ本社(浜松)へ表敬訪問、合同取材とトークショーの場に、RIDE-HACK編集部も足を運びました!

3歳からのスズキっ子が、世界王者になるまで

ロクスン選手は1994年、ドイツ生まれ。3歳でモトクロスを始め、13歳のときにはスズキRM85でジュニア世界選手権を制しています。15歳でスズキ・ヨーロッパのチームからMX2世界選手権にデビューし、17歳でMX2世界チャンピオン。舞台を本場アメリカへ移すと、2013年にAMAスーパークロス250SXウエスト王者、翌2014年には450クラス昇格1年目でAMAモトクロス450MXを制しました。2016年には再びスズキへ戻り、RM-Z450で450MX王者に返り咲きます。文字どおり、キャリアの節目ごとにスズキに乗っています。

その縁の深さは編集部の質問への答えからも伝わってきました。2022年に各メーカーのマシンを乗り比べた末、なぜ最終的にRM-Z450を選んだのか。

「父が地元で小さなチームを持っていて、周りはみんなスズキでした。乗り始めた頃から、僕のバイクには黄色いプラスチックとスズキのステッカーが貼ってあった。2009年、10年のヨーロッパGP時代もスズキです。だからキャリアの中で、何度もスズキに戻ってきているんですよ」(ロクスン選手)

彼にとってスズキは、成績で選ぶブランドである前に、原点そのものだったのです。

チーム任せにしない。「テストの9割はサス」

取材でマシンの核心へ切り込んだのは、ダートバイクプラス店長の寺尾氏でした。「マシンセッティングで特にこだわっているポイントは?」という直球の問いに、ロクスン選手の答えははっきりと宣言。

「エンジンもシャシーもサスも、テストするのは全部好きだよ。ただ、僕らライダーがいちばん多くテストするのはサスペンション、ショックとフォークなんだ。プロ生活を通していちばん重ねてきたのも、間違いなくサスだね」(ロクスン選手)

面白いのはその先。彼のセッティング理論は相当精細でした。

「テストするパーツは、必ず自分でもちゃんと確かめるんだ。中で何が起きてるのかを理解できると、走ったときのフィーリングとパーツを、頭の中で正確に結びつけられる。だからレースで何かを変えなきゃいけないとき、サス屋やエンジン屋の提案に対しても、精度の高い判断ができるんだ。推測が減るんだよ」(ロクスン選手)

乗った感触と部品の中身を、自分の手で一致させる。まるでメカニックのようです。そしてこの姿勢は、RM-Z450に戻ったもう一つの理由とも地続きでした。再び選んだ決め手は、シャシー構造の“馴染みのある感覚”。そして、もう一つありました。

「このバイクのいいところは、テストの幅がかなり広いことだね。大きく変更を入れても、バイクが乗れないようなトラブルには結びつかないんだ」(ロクスン選手)

ライダーにとって、“大きく振っても破綻しない”という素性は大きな武器になるようです。試せる範囲が広いほど、最適解に近づけるからでしょうか。「勝てるプラットフォームだと信じられた」という言葉の裏には、このシャシーの懐の深さがありました。頂点に立つ人間がここまで自分の手を動かしているという事実は、サンデーライダーにとっても示唆的ですよね。

「タイトルが取れたら、辞めるつもりだった」

ロクスン選手の取材を通じて面白かったポイントは、意外な「瞑想」でした。

「トレーニングは僕にとって趣味みたいなものなんだ。ただ、シーズン終盤はタイトで、大事なレースが続く。ミスできない、転べない、いいスタートを切らなきゃいけない。メンタルが本当に難しいんだよ。瞑想で感情をコントロールできるようになったのは、大きかったね」(ロクスン選手)

その筋トレにも、彼らしい理由があります。

「筋トレは、体を守るためにやってるんだ。僕らにはシートベルトがないからね。ランニングや水泳みたいな有酸素はバイクの上で調子よくいるため、そして筋トレは、転んだときに体を守るためのものなんだよ」(ロクスン選手)

自分の身体すら、マシンと同じように観察し、理由から組み立てていく。この探究心こそ、彼を頂点へ押し上げた原動力なのでしょう。

そしてSXのタイトルという大きなものを得た今、次に見据えるものは何か。

「正直、チャンピオンはもう無理か、はるか遠いと思ってた。450を長くやってタイトルが取れなかったからね。だから『もし星が揃ってSXチャンピオンが取れたら、そこで終わりにしよう』って言ってたんだ。でも、取っちゃった。だから今、考え直さないといけない(笑)。それでもレースは続けたい。来年に集中するよ」(ロクスン選手)

ロクスン選手とFOX RACING担当者

取材後は、レプリカFOXジャージにサインをいただきました! こちらはFOX RACING JAPANから近いうちにプレゼント企画が公表されるはず。

引退の線引きを、自分の手で崩してしまった王者。その表情は、晴れやかでした。来期もスーパークロスファンのみなさんに、きっと素晴らしい戦いを見せてくれることでしょう。

 

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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