サスセッティングの一手目は、いつだってサグ出しです。ライダーの体重に合わせてリヤの沈み込みを決める、その基準づくりです。ただし、リヤのプリロード調整はロックナットを叩いて緩めて締めての繰り返しになり、意外と骨が折れます。今年JNCCで活躍しているオーストラリアのステファン・グランキスト選手が来日して目を輝かせていた日本のパーツが、まさにその面倒なサグ調整を楽にしてくれるZETA RACINGリヤショックプリロードアジャスターでした。
手間がかかるのは、サグを詰める往復
リヤショックのプリロードは、スプリングを支えるロックナットを緩めてスプリングシートを動かし、また締める、という手順で調整します。ところがこのロックナットは固く、専用工具で叩いて緩めたり締めたりする必要があります。測って、少し変えて、また測る。結構手間なんですよね……。出さなくても乗れるし、一回出せば十分なんじゃない? って放置している人も多いのでは。筆者もその一人です(反省)。

ステファン・グランキスト選手
そこで、JNCCで活躍中のステファン・グランキスト選手がJNCCの会場でちょうどサグ出しをしている最中だったこともあって、なぜサグ出しが効くのか、聞いてみました。
「サグは体重によって変わるだけではありません。リアサスペンションの初期位置を決めるものなので、位置が高ければ全体的に前下がりのポジションになります。低ければ後ろ下がりになります。これがコースに合っていないと、十分に攻めることができないのです。試しに、思い切りプリロードを締めた状態と、緩めた状態で乗り比べてみてください。コーナリングでのハンドリングの素直さや、上り、下りの姿勢変化などなど様々なところで違いを感じるはずですよ。だから、レース前にコースを歩いて、そのコースの傾向をつかんで、狙い通りのサグに合わせるんです」
ステファン選手はタイヤの空気圧をかなり高めにしていて、0.5以下に細かく設定する日本のライダー達を見て「なんであんなに神経質なんだ?」と言うようなタイプ。つまり、結構マシンは気にしないように見えるのですが、サスだけは別なんだとのこと。
しかもこんなアドバイスも。「サグは一度出して終わりじゃありません。ゆっくり沈めた時と、勢いよく沈めた時の二回を測ってください。その差がリンケージのフリクションです」

Screenshot
このとき見ていた車両は、ゆっくりと勢いよくの差がわずか。ここからリンケージの状態まで読み取れる、と続けます。
「差が2ミリなら、リンケージは good ですね。これが5から10ミリも出るようなら、リンケージが渋っているサインです。フリクションがあると、正しいはずのサグが1センチ近くズレてしまうんですよ」
つまりサグ出しは、単にプリロードを合わせる作業ではなく、足まわり全体のコンディションを一度に点検できる機会でもある、ということです。この日、たまたま同行していた若手ライダーの車両はノーマルサスでサグが出ていない状態でしたが、ちょうどリンケージのグリスアップが済んでいたこともあり、ステファン選手は「せっかくだからサグを出しておこう」と手を動かしていました。プロが現場で、二回測り、差を読み、その場で合わせる。この一連の動作を億劫だといって反故にしないことが、走りを変えるのです。

ZETA RACING
リヤショックプリロードアジャスター スプリングシート交換タイプ
定価:15,180円(税込)
叩かず、手で回せるから、サグを出すのが楽になる
このプリロードアジャスターは、純正のロックナットとスプリングシートを交換するだけで装着できます。従来と違うのは、ロックナット方式ではなく、WPなどでも用いられているバンド方式を採用している点です。5mmの六角レンチでバンドをロック、あるいは解除するだけ。あとは車体に付いた状態のまま、スプリング本体を手で回すだけでプリロードが変わります。何度も叩き込む必要はありません。

スプリングをまわすだけでは空回りしてしまいそうですが、ご安心を。スプリングシートとの接触面には特殊なラバーが配され、スプリング本体を回すとスプリングシートも一緒に回転します。本体内側のネジ部には、WP製と同様に高強度の樹脂を採用。ショックボディのネジ部とカジることなくスムーズに回ります。さらにスプリング下側の取付け部にはテフロンリングを配置し、スプリングそのものをスムーズに回せるだけでなく、スプリングが伸縮する際のねじれによる摩擦を逃がして、ダンパーの動きへ悪影響が出るのを防ぎます。M6ボルトはどちらの向きからでも締められるので、車両に合わせてアクセスしやすい向きを選べます。
素材は、本体が高強度アルミ合金、本体ネジ部が樹脂製、M6ボルトがステンレス、そしてテフロンリングにはテフロン。そう、ただロックナットを叩かずにまわせるというだけではないのです。渋さやカジりを出さないための素材選びがポイントなのです。
実際に使っているステファン選手の感想
ここまで「サグを大事にするプロ」として登場してもらったステファン選手ですが、実はこのプリロードアジャスターを普段から使っている一人。サステストのとき、使い勝手を聞いてみました。
「気に入っていますよ、とにかく簡単です。レース前は毎回チェックして、そのあとは3~4回の走行ごとに見ます。テストのときはサグを大きく動かしますね。前のレースは砂が深かったので、サグを増やして車高を落としました」
レース前は毎回、そこからは数回の走行ごと。プロがこの頻度で足を合わせ込めるのは、手で回すだけで済むからこそです。しかも、砂のコースではサグを増やして車高を落とすというように、コースに合わせて積極的に動かしています。まさに「走るたびに触れる調整項目」の実践です。

ステファン選手が見せた「ゆっくりと勢いよくで二回測り、差を読んでから合わせる」という手順は、理屈は分かっていても、調整のたびに工具を出して叩くとなれば腰が重くなります。手でスプリングを回すだけで動かせるなら、ちょっとした休日の練習前にも測って、回して、また測る、という手順をその場で回せます。同じくダートフリークが扱うDRCサグチェッカーと併用すれば、計測から調整までの往復がさらに素早くなります。
サグ出しを「たまにやる面倒な作業」から「走るたびに触れる調整項目」へ。マシンのポテンシャルを100%発揮したいあなたにおすすめしたい、ちょっとしたアイテムです。