オフロードバイクのライディングは、スキルアップすればするほどフットペグが重要になってきます。だからこそ、常に同じ踏み心地をキープできるのが大事。新たにリリースされたマックスフットペグは、泥・石詰まりしにくい構造になっています
排泥性のいいフットペグ
オフロードバイクの練習メニューとして良く知られているのが、スタンディングのみ、または片手だけを使って走り続ける方法です。これらは、いかにバイクをハンドルではなくステップで的確に操作するかを身につけるためにおこなわれるもの。人馬一体の感覚を身につけるためには、ステップ操作の上達が欠かせないのです。実際、本当の馬に乗るにも「あぶみ」が大事で、世界的に見てもあぶみの発明は先史時代から中世にかけて戦争や社会を変えたほどのインパクトがあったのだとか。もしあなたのオフロードバイクにフットペグが無かったとしたら、野生馬にまたがるかのごとく、とてつもなく大変なスポーツになってしまうことでしょう。ちょうどこの原稿を書いている3月31日の早朝にMotoGP アメリカズラウンドが開催されましたが、マルク・マルケスが転倒でステップを失い、そのまましばらくは前を追いましたがが、やはり数周で諦めています。
JNCCなどで活躍している馬場大貴選手は、今回紹介するZETA RACING マックスフットペグの開発テストに関わっていますが、サンプルを渡されたときに「僕はステップ加重をかなり気にしているので、ステップについてはダメだったら使わないという話をダートフリークとはしていましたが、結果的に気に入っています」と話してくれました。
ZETA RACING
マックスフットペグ
¥11,000〜13,200
マックスフットペグのコンセプトは排泥性の解決です。モトクロッサーやトレールバイクの純正のフットペグにはペグの中央に剛性を確保するための仕切りが入っていますが、マックスフットペグは仕切りを一切なくした設計で、輪状になっています。当たり前ですがこの形状のおかげで泥がつまりにくく、いつでもフレッシュな状態でフットペグを操作できるというわけです。馬場選手は「雨でフットペグを踏み込みたい時に、泥で滑って抜けるのがストレスになるのですが、これならそういうことはないですね。今までは泥が詰まったら、レース中でもブーツで横からカンカン叩いて泥を落としていたんです」とのこと。馬場選手と同じく先行開発テストに関わった松尾英之選手は「フットペグが詰まった時は、足の裏に何か変な感覚があり、爪の引っかかりがなくなって滑ってしまいます。マックスフットペグは、泥がもこっと詰まらないので違和感もなく、爪の引っかかりもしっかりありますね」と好印象。泥が詰まってしまうと、フットペグを失うも同然。いかに排泥性を確保するかが重要なのです。ちなみにマディの日だけでなく、フットペグには岩がはさまってしまうこともあります。そういったトラブルも、もちろん岩のサイズによりますが、少なくなります。
あえての鉄製、コストと性能の好バランスを目指す
輪状にして、中央部の構造体を減らすかわりに、剛性を確保するためマックスフットペグはクロモリ製にこだわりました。開発グループによれば「強度出すために肉厚を高めました。工業製品の試験場でプレス試験をしましたが、旧来からあるクロモリワイドフットペグよりも強度は高い物になっています。チタンにすれば最強のステップになりますが、コストはかかりますね。今回のマックスフットペグは価格も抑えめで、幅広いライダーに手に取っていただきやすいものになったと思います」とのこと。ZETAには鍛造 A2014材をCNC加工によって細部まで削り出したアルミ製のフットペグ、その名もアルミフットペグもラインアップしており、こちらは軽量でグリップ力もいいのですが、比較的泥は詰まりやすいかと思います。どちらかというと、競技よりはトレールバイクへの装着例が多い商品です。
普段は金属加工の仕事をしている松尾選手にも聞いてみると「種類にもよりますが、鉄は粘りがあってパキッと折れることはまずありません。このマックスフットペグは製造の仕方にもよりますが粘りやすい鋳造なので安心ですね。アルミのように割れてしまうことはほとんどないので、理に適っていると思いますよ」とのこと。
ニーグリップが自然にできて、泥を突き抜ける歯
歯の設計もこだわったポイントです。馬場選手によれば「実は外側の歯は2mm高く設計されているんですよ。外側の歯が高いと自然に内股の状態になり、膝も内側に少し入りますよね。つまり、ニーグリップを自然にできるようになるんです。

歯は外側が2mm高い

自然に内股になりやすい歯の設計になっています
余談ですが、お客さんのバイクを預かるとき(編注:馬場選手はサスペンションショップのババナショックスを経営)2〜3年乗られていると、フットペグの付け根が削れてしまってフットペグが垂れてついてしまっているものがあるんですが、こうなってしまうとバイクをホールドしづらくなってしまいます。そんな時は、替え時ですよってアドバイスします。やっぱステップって使っているうちに根元が削れて傾いてしまうため、消耗品パーツなんです。この傾きを維持するのが大事なんですよね」とのこと。また、この歯はMFJの規定内の尖り度でありながらも、歯を長めにすることで泥がついても先端がしっかりブーツに食いつくように設計されています。「尖り過ぎているとブーツを傷めるので、このぐらいがちょうどいいですね。結構いろいろと意見させてもらいましたし、出来上がってきた製品はとてもよくできています」
こういった輪状のステップは、この数年エンデューロ業界ではトレンドと言えるものでしたが、マックスフットペグは鉄製にすることでタフさと価格をうまくバランスさせています。マディ時の泥づまりにストレスを感じたり、もっとフィーリングのいいフットペグを探している人は、ぜひ一度お試しください。