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ZETA RACINGハンドガードの偽物を、破壊試験にかけてみました

乱立する通販サイトに、たくさんの偽物オフロードバイク用品が並ぶようになってしまいました。そこで編集部では、ZETAのハンドガードを模した偽物を徹底調査!

強度は1/5以下、いざという時に手やレバーを守ってくれるの?

現在、temuやAli Expressなどの通販サイト、あるいはメルカリをはじめとするフリマサイトなどで、多数のオフロードバイク用品の偽物が出回っています。これらに対してダートフリークでは度々警鐘を鳴らしてきましたが、このたびさらに突っ込んだ調査をしてみることにしました。対象は、ZETA RACINGの数ある商品の中でも人気の高いアーマーハンドガードのコピー商品です。

 

元々アーマーハンドガードは、エンデューロ向けに開発された商品。高速でウッズを走ってる際にハンドルエンドを木にぶつけても、ハンドルと木に指を挟んで切断してしまわないようにするためのガードです。転倒時にレバーを守ってくれるなど副次的な効果もあり、長年サンデーレーサーからプロレーサーまで幅広く愛用していただいています。いつしか、このアーマーハンドガードをつけていると本格的なオフロードっぽいルックスを手に入れられることから、トレールバイクだけでなく、ハンターカブやアドベンチャーバイクに取り付ける人が急増。このアーマーハンドガードは取り付けられるオプションが豊富で、ツーリング向けの大型風防になるスクードプロテクターや、アーマーハンドガードを前提としたスポーツツーリング向けのハンドウォーマーなども好評を得てきました。いまや、オフロードに限らず広く一般のオートバイに受け入れられている、一般的なパーツと言えるでしょう。

右が本物、左が偽物です

それだけに偽物の存在は悪質と言えます。特に立木などに衝突した場合にも耐えてくれる強度が、偽物にあるのでしょうか? 無かったとすれば、「ハンド」を「ガード」してくれないものと言えます。素材を見る限り、本物はアルミ押し出し材に表面はヘアライン処理され高級感があるのに対して、偽物は鋳造材……なのかな? ざらっとした表面加工が残念な感じで、見た目にも弱そうです。鋳造は押し出しに比べて型のコストが安く、しかし強度に劣ります。早速、編集部では破壊試験にかけてみることにしました。

本物のアーマーハンドガードの試験風景

試験は3点曲げと呼ばれるごく一般的な製品強度の試験です。ガードに対してかける負荷を徐々に上げていき、どこでどの程度曲がるのかを調査します。まず、本物のアーマーハンドガードを試験機にかけてみました。1万2000ニュートン、つまり1200kg近くで少しずつ曲がっていきますが、その後も緩やかに曲がり続けて試験機の限界を超えてしまいました。曲がり箇所は3mmほど沈み込みましたが、負荷を抜くと1.5mmほど戻り、まだ弾性を保っていることがわかります。

偽物のハンドガードの試験風景

さて、問題の偽物のハンドガードです。曲がり始めたのは2400ニュートン、わずか240kg。ここから急激に曲がっていき、6000ニュートンで7mmも沈み込んでしまいました。さらに弾性は失われていて、負荷を抜いても元には戻りません。これは専門用語で「降伏点を超えた」と言うのですが、まさにハンドガードが降伏した状態。⅕の強度で、さらに弾性もあっという間に失ってしまうのですから、本物VS偽物のハンドガードとしての品質比較は、言わずもがな。相手になりません。

 

そもそも取り付けできないんだが……

実走テストもしてみようと、取り付けを試みてみました。取り付けステーなどもすべてが違っていますね。

アンカーの数が不足していたりする偽物(左)。角の面取りもされていなくて安物然としている

まずは付属するアンカー。アルミハンドル用のアンカーと、鉄ハンドル用のアンカーがついてきましたが、アルミハンドル用が1つしか入っていませんでした。検品ミスでしょうか。アンカーの作りも雑で、割りが斜めに入ってしまっています。アンカーボルトも、ヘキサゴンボルトの5mmでしっかり締まりそうにありません。

マウントは、角の面取りがされていないのと、表面加工が雑ですね。本物のように面取りをしておくと、力がかかったときにハンドルがここから折れづらい利点があります。本物は隅々まで考えられていますよ。

偽物は22.2mmと28.6mmの2種類のハンドルに対応するため、樹脂のカラーがついてくるのですが、そもそもこの咥える部分に樹脂を噛ませるのはどうなんでしょうか。衝撃を受けてまわってしまう可能性大です。

偽物のマウントでは、テーパーバーに使えるようで使えません…。

と、ここで問題が……。マウントが28.6mm径ぴったりになっていて、テーパーハンドルバーのテーパー部分では咥えられません。28.6mmある根元に取り付けると、今度は角度や長さの問題でガードを取り付けられません。ということは、テーパーハンドルにはそもそもつかないということになります。設計ミスですね。

ZETAのデカールも偽物に付属します。このデカールは完全コピーされているのか、見分けがつきませんでした

偽物に本物のマウントを奢るのは大変遺憾ですが、取り付けてみないことにははじまらないので、本物のマウントを流用して取り付けました。YZ250FXの純正ハンドルには、かなり形が合わないのですが、ある程度仮止めしながらあわせていけば、がっちりとめることはできました。

偽物の樹脂プロテクターの取り付け部は、大きな馬鹿穴があいていて、ここに雌ネジのアダプターをかませる方式です。本物は雌ネジが本体に切ってあります。偽物の穴は大きいので、強度にも影響することでしょう。ちなみに前述した破壊試験では、穴の位置に負荷をかけると180kgで曲がり始めてしまいました。弱すぎる!

1転けで樹脂が割れてしまった

実走テストは、ガレの多い日野カントリーオフロードでおこないました。わざと転けなくとも、しっかり左右に転倒。ただし、激しく転倒できなかったので残念ながらハンドガードを曲げるまでには至りませんでしたね。とりあえず、樹脂プロテクターが簡単に割れてしまったことはご報告しておきましょう。

結論。不安極まりない!

実走テストでは曲げるには至りませんでしたが、本物の1/5しか強度がないというのはあまりに怖いなと感じました。思い切りウッズで木に激突したとして、ハンドガードが弾性を持たずに曲がってしまったら、手が挟まれたままになってしまうことだってあるでしょう。いや、それこそ公道で事故にあって手が挟まれたままバイクと離れられずに絡んでしまったら、死亡事故の原因になりかねません。

 

ZETA RACINGのハンドガードは手前味噌ながら長年皆様に愛用され、アップデートを続け、十二分な強度を持っています。取り付けも、トレールバイク向けには車種専用のボルトオンできるものを用意していて間違いがありません。そもそも、ZETA RACINGと銘打ってしまっている偽物を装着することのいかに恥ずかしいことか。悪いことは言いません、ぜひ正規品をお求めください!!

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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