CROSS SECTIONのエントリーMTB、TRIGGERでどこまで遊べるのか? MTBパークでじっくり付き合ってみました

CROSS SECTION
TRIGGER
¥79,200
期待高まるトレイルの入り口へ
日頃からマウンテンバイクの奥深さに魅せられている僕にとって、今回の試乗の舞台に選んだ神奈川県横浜市に位置する「トレイルアドベンチャー・よこはま」は、首都圏近郊で気軽に、そして存分にMTBの醍醐味を味わえる珠玉のフィールドです。ここ最近、MTBの世界に足を踏み入れたい若者たち、あるいは予算の制約で本格的なモデルに手が届かない初心者の方々から、「良いエントリーモデルはないか?」という声を耳にする機会が増えていました。そんな中、TRIGGERは、初期費用の高さという障壁を取り除き、MTBの扉を開くための「希望の一台」として、僕自身も注目していました。今回の目的は、この意欲作TRIGGERを、初心者から経験者まで誰もが心ゆくまで「気軽に」楽しめるトレイルアドベンチャー・よこはまという理想的な環境に持ち込んだ時に、どれほどのライディング体験ができるのかを徹底的に探ること。この検証が、これからMTBを始めたいと考える方々にとって、「こんなに手の届く範囲で、こんなに素晴らしいMTB体験ができるんだ!」という確信に繋がればと願っています。

トレイルアドベンチャー・よこはま 〒241-0001 神奈川県横浜市旭区上白根町1425-4 ※カーナビに「ズーラシア」とセットすることをオススメいたします TEL070-4170-7354
新緑が眩しい季節、僕はTRIGGERと共に自然豊かな横浜の丘陵地へと車を走らせました。駐車場に到着すると、既に多くのマウンテンバイカーの方々が、それぞれの愛車を車から下ろし、楽しそうに準備を進めていました。僕も早速受付で手続きを済ませ、バイク洗車場も完備された広々とした駐車スペースにTRIGGERを下ろします。僕が選んだTRIGGERの車体色はホリデーブルー。この鮮やかな青い車体が、森の深い緑に本当に良く映えるのです。開発の担当者が「安価なモデルにありがちな“格好悪い”という印象を払拭するため、見た目にも最新のトレンドを取り入れ、デザインにもこだわっています」と力強く言っていたその言葉通り、洗練されたフレーム形状とシンプルな佇まいは、エントリーモデルらしからぬスタイリッシュさを醸し出しています。早速、跨いでみると、車体から感じるシャキッとした剛性感や、バイク全体の軽快感に早くも心拍数が上がっていくのを感じました。これならば、コースのどんなセクションにも臆することなく、果敢に挑戦できる、そんな期待が高まります。

スローピングフレームで、取り回しのよさとスタイリングの良さを両立
最初の一歩は丁寧に。TRIGGERと歩むMTBの基礎
まずはウォーミングアップを兼ねて、最も難易度の低い「グリーントレイル」から走り始めました。緩やかな上り下りや、木の根が張るトレイルが連続する、いかにもMTBらしいコースです。こういった場所で真っ先に感じるのは、TRIGGERのスローピングトップチューブ(トップチューブを低くするデザイン)の恩恵です。タイトなターンやちょっとした丸太越えでも、サッと足を地面につけやすいので、安心して車体を傾けられます。開発担当者も「安価なモデルでは採用されづらいトップチューブとシートチューブが一直線になるほどのスローピングを取り入れ、山での取り回しの良さを確保しています」と話していましたが、これは特にMTBに不慣れな方にとって、転倒のリスクを減らし、心の余裕を生む上で非常に大きな要素だと改めて実感しました。

グリーントレイル入り口。わかりやすく標識が立っています

イージーなトレイルながら、しっかり作り込まれた広めの橋やラダーが本格的!
また、不意なチェーン落ちによるトラブルはMTBライドの楽しさを半減させかねませんが、TRIGGERに搭載されたクラッチ付きのリアディレイラーは、ガタガタ道でもチェーンの暴れをしっかり抑え、スムーズな変速を可能にしてくれました。余計な心配をせずにペダリングに集中できるのは、本当にストレスフリーで助かります。「最高の性能とは言えないまでも、山で問題なく使用できる信頼性の高いパーツ」を選定したというサスペンションも、小さなギャップや路面の凹凸をゴツゴツと突き上げることなく、しなやかに吸収してくれて、おかげで快適にコースを周回することができました。税込み7万9,200円のMTBと聞くと、山を走る用ではなく「ルック車(スポーツサイクル風の見た目だけど性能が伴わないモデル)」だよね、と言われそうなコストパフォーマンスの良さですが、この「ちゃんとダートを走れる」MTBとしての性能をもっとアピールするべきだな、と感じました。
攻める楽しさを体感、ブルートレイルでの発見
身体が十分に温まってきたところで、少し難易度が上がる「ブルートレイル」へと進みます。ここはグリーントレイルよりもアップダウンが増え、コーナーもタイトなバンクコーナーが増えることで速度が乗る場所が多くなってくるため、MTB本来の醍醐味が味わえるコースです。

適度な上り返しも、TRIGGERのジオメトリーならあまり苦にはなりませんでした
しかし、TRIGGERは僕の想像を良い意味で裏切ってくれました。開発者が「単に安いだけのバイクではなく、トレイルまで自走で行ってもちゃんと走れるジオメトリーを採用しました」と熱弁していたように、適度に立ったヘッドアングルが、テクニカルな上りでの重心移動をサポートしてくれますし、下りでは程よい安定感を発揮するのです。経験上、操縦に対して素直に反応してくれるバイクは本当に頼りになります。このTRIGGERはリアホイールが旧規格のクイックリリース方式なのですが、細めで適度な剛性感のクイックリリースならではの「しなやかな乗り心地」が路面の衝撃を吸収してくれ、必要以上に振動がライダーに伝わらないのも非常に好印象でした。ちなみにホイール関係で言っておくと、リムが最初からチューブレスに対応しているのも、いずれグリップや乗り心地のチューニングをしたくなったときのことを考えると、ユーザーにとっては嬉しいポイントですよね。

クイックリリースではあるものの、むしろ柔らかく応答性のいい車体に仕上がっています

上りをこなせるヘッドアングルで、マルチに走れる仕様です

ブルー、グリーンともに気持ちのいいバームあり。Mサイズの車体でライドしましたが、積極的にバイクを操っていくことができて好印象でした
遊んで学ぶ! パンプトラックとスキルアップエリアの有効性
ブルートレイルで心地よい汗をかいた後、一度ベースエリアに戻り、「PUMPTRACK(パンプトラック)」と「SKILL AREA(スキルエリア)」へ。ここはバイクコントロールの基礎から応用までMTBを上達するための要素が詰まっています。

スキルパークには、いろんなセクションが
パンプトラックでは、ペダルを漕がずに路面の波に合わせて身体を動かすことにより体重移動だけで加速していく感覚を楽しむことができます。タイヤと地面が擦れる音、バンクを駆け上がっていく遠心力、このバイクとの一体感が最高に楽しい瞬間です。ハンドル操作も実に軽快で、ライン取りがしやすく、バイクを“遊ばせる”楽しさを存分に味わえます。パンプトラックは奥が深く、5分も全力でバイクを地面に押しつけていると太ももがパンパンになるため、しっかりフィジカルを鍛えたいあなたにもおすすめしたいセクションです。本格的にパンプで遊ぶなら専用のMTBがいいのですが、しばらくはTRIGGERで十分楽しく学べるはずです。大抵のことはなんでもできちゃうというのがTRIGGERの心強いところ。スキルエリアでは、少しの段差や連続するタイトなターンなど、基本的な動きを繰り返し行いました。TRIGGERは、初心者にもMTBの基本的な動きを体験しやすく設計しているというだけあって、スムーズにフロントアップできますし、重心移動も感覚的につかみやすいと感じますね。こういった場所で繰り返し練習することで、誰もが楽しみながら確実にMTBのスキルアップを図れるでしょう。

樹脂製の本格パンプトラック。十二分に楽しく遊べちゃう!
いざレッドトレイルへ!TRIGGERと共にステップアップを実感
いよいよ僕のMTBスキルを本格的に試すべく、パーク奥に見える最難エリア「レッドトレイル」へと足を踏み入れました。マップではスキルレベルが「HIGH」と表示されており、中級者向けのテクニカルな要素が凝縮されたコースです。これまで、何度か足を運んでこのコースも体験してきましたが、今回はTRIGGERとどんな走りを見せられるか、とても楽しみでした。

ジャンプにも挑戦してみました。大きなジャンプはやめておいたほうがいいのですが、そもそも初心者は飛べないので、TRIGGERでもじゅうぶんチャレンジできちゃいますね

がっしり作り込まれたフレームです
路面はグリーンやブルートレイルに比べて上下の動きが大きく、バーム(バンク付きコーナー)やコブが連続します。速度が乗った状態での的確なライン取り、ブレーキング、そしてバイクコントロールが求められるセクションですが、TRIGGERはここでも驚くほどのポテンシャルを発揮してくれました。開発担当者は、「フレームの剛性はしっかりと試験をクリアしており、思い切りオフロードで遊ぶことができるレベルに仕上げています。山を走れるしっかりしたMTBとして設計しました」と語ってましたが、実際にレッドトレイルを走ってみて、その堅牢性と操縦性のバランスの良さを改めて感じました。小さなドロップを降りても、車体の弱さを感じることはありません。もっとスキルを高めて大きなドロップを降りたりすればまた印象も違うかも知れませんが、このコースならこれで十分。狙ったラインをトレースしやすく、アグレッシブな下りでも安心して車体を倒し込めます。もちろん、時にはラインを外してヒヤリとする場面もありましたが、TRIGGERの素直なハンドリングが常にリカバリーを助けてくれました。これは、MTBの奥深さを知る上で非常に重要な経験となります。まさに「MTBを始めたばかりの人が、自分のスキルアップに合わせて乗りこなしていくためのベース」として、このTRIGGERは最適な相棒であると確信しました。この価格帯で、ここまで楽しめる一台は、なかなか出会えないのではないでしょうか。
充実の一日の終わりに
夕暮れが近づき、太陽の光が森にオレンジ色の陰影を落とし始める頃、僕は汗と土埃にまみれたTRIGGERをバイク洗車場で丁寧に清掃しました。ワイヤー類があえて外装式になっているため、ちょっとしたメンテナンスのしやすさを感じられます。自分で簡単に清掃や調整ができたり、MTBのメカニズムに触れられるのは特に初心者の方にとっては大きなメリットです。「お客様自身で容易に整備できるよう配慮しています」という開発担当者の言葉は伊達じゃないなと納得。
今回のトレイルアドベンチャー・よこはまでの体験を通じて、TRIGGERがMTBへの敷居を大きく下げ、多くの人々にマウンテンバイクの楽しさを届けてくれることを確信しました。もし「MTB、始めてみたいけど、どこで何をしたら…」と迷っている方がいたら、ぜひTRIGGERを手にトレイルアドベンチャー・よこはまのようなフィールドで自然と一体となるMTBの新しい世界を体験してほしいと心からお勧めします。