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ZETA RACING SX3ハンドルバー、デザインを一新。早速JNCCで使ってみた

ZETA RACING のハンドルバーシリーズの中でも、多くのライダーに支持されてきた「SX3」がリニューアルされました。モデルロゴとバーパッドのデザインがシャープになり、そしてグリップ部をアップデートしています

ローレットを廃し、ロックオングリップ時代に対応

 

これまでSX3のグリップ部には、滑り止めとして細かな凹凸加工「ローレット」が施されていました。接着剤で固定するグリップが一般的だった時代には有用な仕様でしたが、ボルトで固定するロックオングリップが主流となりつつあるため、表面を完全にフラットに仕上げることで、ロックオングリップを差し込みやすくなり、固定力もアップしました。グリップを交換する頻度が高いライダーほど、この変更の恩恵は大きいでしょう。ローレットの摩耗や接着剤の残留を気にする必要がなく、メンテナンス性も向上しています。

さらに、モデルを象徴する「SX3」ロゴが新しいデザインへと変更されました。従来の印字よりもシャープで、クール。合わせて、付属のバーパッドも同ロゴをあしらった新デザインに変更。ZETA RACING の現行シリーズと統一感のある外観になっています。

ハンドルバーは、ライダーにとってもっとも目に入るパーツのひとつです。マシンの印象を左右するだけでなく、スポンサー露出が多いレース現場では見映えのよさも重要な要素ですよね。

JNCC八犬伝に早速投入

編集部では、この新SX3ハンドルバーを早速実戦で使ってみることにしました。取り付け車輌はヤマハYZ250FX。純正のハンドルバーを、ちょうどクラッシュで曲げてしまったところです。JNCCの場合、ハンドガードの装着が義務化されているため、多くのライダーが思い思いのパーツの組み合わせでモディファイしていますが、編集部の車輌もZETA RACING アントラーハンドガードに、ピボットレバー、ODIのロックオングリップなどで好みに合わせています。

SX3ハンドルバーはセンター部分の目盛りがまず便利。装着したモデルはMX-111でベンドはCR/CRF-Low, KXF-Low、リニューアルされた品番はまだ多くありませんが、少しずつそのラインナップは増えていく予定です。YZ250FXに合わせても、目盛りをセンターでセットしてしっくりくるフィーリングでした。

リニューアルの要であるグリップ部は、たしかにODIのロックオングリップとベストマッチでした。差し込みやすく、固定力もアップ。ローレットが刻まれていると、かなり強く締め込まないとずれる感覚がありました。接着剤を使う従来のグリップの場合は、ワイヤリングが必須になったと感じます。

ちなみに余談ですが、ロックオングリップは樹脂の芯が入っていることでオープンエンド化しやすいのもうれしいポイントです。径の合うパイプをハンマーで打ち込むことで、きれいな円を開けることができますよ。

八犬伝では大きな転倒はなく、その丈夫さまでも試すことはできませんでしたが、テーパーバーのしなやかさのおかげで、90分全開で攻め続けることができました!

 

ZETA RACING ハンドル開発の原点と改良の積み重ね

ZETA RACING がハンドルバーを手がけ始めた当初、まだ多くのモトクロッサーが鉄製のハンドルを純正装備していました。軽量で強度のあるアルミハンドルへの交換は、当時のレーサーカスタムの第一歩。ZETA RACING の初期モデルもアルミ合金7075材を使っていましたが、当初は焼き入れ工程の管理が難しく、硬くなりすぎて折れてしまう課題がありました。

初期のリブが入ったリブドバー

その反省から、次に採用したのは柔らかめの2014番アルミでした。しなやかさを狙った設計でしたが、今度は転倒時に簡単に曲がってしまい、「ZETA RACING のハンドルは折れないが曲がる」と評されることになります。ライダーからのフィードバックを受けて、開発陣はもう一度7075に戻り、素材そのもののポテンシャルを活かす方向で改良を進めました。

焼き入れの温度や冷却時間を精密に制御することで、折れにくく、しかもしなやかにしなる特性を両立。これが現在のZETA RACING ハンドルの基礎になっています。開発を担当したM氏は「硬度の数値よりも、実際にライダーが感じるしなやかさを優先した」と語っています。強さと柔軟性のちょうど中間点を探り続けた試行錯誤の積み重ねが、いまのZETA RACING らしさを形づくったのです。

SX3の完成度と、変わらない核

SX3は、ZETA RACING が長年の開発で得たノウハウをベースに開発されたテーパーバーです。アルミ合金7075材を使用し、製造工程ごとに熱処理管理を徹底。剛性を高めながらも、ライダーの操作を邪魔しない自然な“しなり”を持たせています。このバランスの取り方こそ、ZETA RACING が20年以上追い続けてきたテーマです。

テーパー構造自体は今や純正でも一般的な仕様ですが、ZETA RACING は素材と製造管理の段階で他社との差を築いてきました。ハンドルの寸法や曲げ角度も、ライダーとの対話を通じて磨き上げられてきたものです。全日本トライアルIAスーパークラス野崎史高選手との共同開発で生まれたトライアルコンペティションバーなど、実戦で得たデータを設計に反映する姿勢は今も変わりません。

SX3のリニューアルは、そうした開発史の延長にあります。構造や素材は変えず、現在の装着環境に合わせて細部を整えた。時代に応じて“必要なところだけを変える”というのがZETA RACING の開発スタンスです。ローレットの廃止もその一例。不要になった機能を潔く削ぎ落とし、より使いやすく、より洗練された形へ。派手な変更ではないものの、製品が成熟した証といえるでしょう。

SX3は今も、全日本モトクロスやエンデューロのトップカテゴリーで使用されています。ZETA RACING のハンドルバーは「折れず、曲がらず、しなやかに走る」という信頼の象徴として、これからも進化を続けていきます。

 

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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