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TRIGGERからTRAVERSEへ、ダートフリークサイクル グループが明かすMTB戦略

“ヨツバサイクル”で知られるダートフリークのサイクル グループが、またしてもMTB市場に新たな風を吹き込むべくCROSS SECTIONブランドから「TRIGGER(トリガー)」をリリースしました。今回はサイクル担当者を交えて、お話しいただきました

MTBへの第一歩を後押しするエントリーモデル「TRIGGER」

「TRIGGER」は、MTBに興味を持つ初心者、特に初期投資の負担が大きい学生層を主なターゲットとして開発されました。開発に携わった担当者は「エントリーモデルのMTBでも最近では10万円以上してしまいますよね、ヘルメットやシューズを含めると15万円程度の初期費用がかかるのが普通ですが、うちの目標は10万円で一式揃うこと」と、その価格設定の背景を説明しています。ポイントは安価なモデルにありがちな格好悪い印象を払拭するため、機能的にも見た目にも最新のトレンドを取り入れていること。購入後すぐに山でトレイルライドを楽しめるよう、十分な走行性能と耐久性を持つパーツが選定され、組み上げられているのもポイントです。

CROSS SECTION
TRIGGER
¥79,200

まず、アルミ製フレームは100~120mmのサスペンションを想定したオールマイティに使えるジオメトリー。MTBは想定されるサスペンションの長さによって、短ければ上り基調、長ければ下り基調にざっくり分かれます。TRIGGERの場合は上りも下りもある程度こなせるモデルで、まだどういう遊び方をしたいか方向が定まっていないエントリー層にうってつけ。また、スローピングトップチューブ(トップチューブを低くするデザイン)を採用することで山中での取り回しの良さを確保しています。インターナルタイプのドロッパーポスト用の穴なども確保されているところが、いかにも現代のバイクですね。メンテナンス性も重視されており、ワイヤー類はあえて外装式を採用。見た目よりもメンテナンスのしやすさを優先し、ユーザー自身で容易に整備できるよう配慮されています。

ドライブトレインには山でのチェーン落ちトラブルを大幅に減らせるクラッチ付きのリアディレイラーが搭載されています。サスペンションやブレーキは特別なものではありませんが、山で問題なく使用できる信頼性の高いパーツが選定されました。ホイールに関しては、リムが最初からチューブレスに対応しているため、将来的にチューブレス化する際の費用を抑えることが可能です。

ホイール固定方式にはコストを抑えるためクイックリリースが採用されていますが、開発担当者は「現在の主流であるスルーアクスルやBoost規格に比べるとリアの剛性はやや劣りますが、しなやかな乗り心地とも言え、一概に欠点とは限りません。また、お持ちの古いホイールパーツを流用できるため、無駄な出費を抑えてアップグレードできる利点があります」と、その特性とメリットを説明します。ホイールサイズは、XSサイズには26インチ、S・Mサイズには27.5インチが採用されています。特に26インチモデルは、かつて販売されていた「ヨツバサイクル」からのステップアップとして選ばれるケースが多く、高品質な26インチMTBが少ない現状を鑑みた救世主としても活躍してくれるでしょう。

「TRIGGER」の耐久性と遊びの幅について、開発担当者は「個人的にはあらゆる遊び方に対応できると考えています」と自信を見せます。「激しいライディングには向いていませんがフレームの剛性はしっかりと耐久試験をクリアしており、初心者がスキルパークでジャンプにチャレンジすることもできます。飛べるようになってきたら専門的なMTBを購入してもらえれば幸いです。専門的なMTBと比較すれば剛性面で劣る部分はありますが、すぐに壊れるような設計ではありませんよ。MTBを始めたばかりの人が、自分のスキルアップに合わせて乗りこなしていくためのベースとして最適な一台となると思いますよ」と展望を語りました。

 

本格的なトレイルライドへと誘う開発中の「TRAVERSE」

「TRIGGER」に続いて、CROSS SECTIONでは現在、本格的なトレイルライドを志向するライダーに向けた「TRAVERSE」の開発が進められています。このモデルは、「TRIGGER」でMTBの魅力に触れ、さらに本格的なライディングを楽しみたい若者層、あるいは「酸いも甘いも知り尽くした」ベテラン層をターゲットに据えました。開発担当者自身が「お小遣い制のお父さんたちが買いやすい価格にしないと、そもそもMTBを続けられないですからね」と語るように、手を出しやすい価格設定を目指しています。フレームにはクロモリを採用しており、剛性バランスや耐久性にも優れています。

サスペンションは120mmから最大140mmまで対応、トレイルバイクとして設計されたジオメトリーですが、下り性能だけでなく、登りも楽しめるバランスを重視したところがポイントです。「最近のトレンドだとヘッドアングルを寝かせて下りの安定性を求めるのが主流ですが、日本にはなかなかそこまでのシチュエーションはありません。せっかく日本のブランドなので、登りも下りも楽しめるバランスを意識して設計しました」と、開発担当者は他社との違いを強調します。

拡張性も考慮されており、リアエンドにスライド式ドロップアウトを採用し、一部のマニアックなユーザーからの要望に応え、シングルスピード化が可能です。10年ほど前に流行った多段ギヤを取り払いストイックなシングルスピードにして山を走るブームは、いまだSDA王滝などのマラソン系レースなどで好まれています。開発担当者は、この設計の背景には「一台で遊び、旅をし、担いだりもできる、様々な用途に使えるようにしたかったんです。置き場の関係で一台しか持てない方もいらっしゃると思うので、いろんな使い方に対応できるようにしました」と説明します。

主要規格への対応も充実しており、Boost規格のハブ、上下異径のテーパーヘッド、ねじ切り式の73mm BB、ユニバーサルディレイラーハンガー(UDH)を採用しており、最新のSRAM製コンポーネントも装着可能とするなど、マニアックなユーザーでも楽しめる仕様となっています。担当者によれば「まだ開発中なのですが、フレームが現状、平均よりやや重いので軽量化したいと考えています。しかし、軽量化にはコストがかかるため、そのバランスをどう取るか迷っているところです」とのこと。どんなMTBに仕上がるのかご期待ください。

CROSS SECTIONの未来戦略。市場拡大と多様なサイクリング体験の創出

CROSS SECTIONは、MTB市場の現状と未来を見据え、戦略的なブランド展開を進めています。マウンテンバイクのホイールサイズについては、かつて26インチから27.5インチへ、そして29インチへと主流が変化してきました。コンポーネントも電動化が進み、高価格化が進んでいますが、その流れに反して90年代、あるいは00年代の昔のMTBをレストアするブームも密かに起きています。CROSS SECTIONでは、ダートフリークならではのクロスバイク的な自転車を作ろうということで、90年代のMTBさながらにほとんどスロープしていないホリゾンタルフレームに、MTBの太いタイヤを合わせた街乗りMTBも開発中。一層、様々なエントリー層へリーチすべく歩みを進めています。

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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