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ずっと使えるPODニーブレース。リガメントの点検と、メンテナンス

転倒の瞬間だけが、膝を故障するタイミングではありません。足を出す方向を間違えたとき、立ちごけ……モトクロスなどのスポーツ走行ではなくても、膝の靱帯を故障してしまうのはよくあるトラブルです。膝は本来、前後方向にしか動かない関節で、ねじりや横方向の力には非常に弱い構造です。しかもその限界は、筋力や反射では防ぎきれないほど急激に訪れます。膝の靱帯は一生もの。比較的軽いとされる内側側副靭帯損傷ですら、半年ほども歩行が困難な痛みが続きます。前十字靱帯損傷で完治できず、現役生活の引退を余儀なくされるアスリートは少なくありません。

この弱点を補うのがニーブレースです。PODのニーブレースは、膝関節の屈伸を忠実にトレースするため、内部に人工腱「リガメント」を内蔵しています。しなる繊維でニーブレイスの上下を連結し、人の靱帯と同じように伸縮をコントロールする構造で、他社にはない独自の技術になります。金属ヒンジに比べて軽く、膝の動作時にわずかな“たわみ”を許すため、装着感が自然でバイクの操作を妨げません。膝を守りながらも、バイクの入力を感じ取れる。PODが多くのライダーに支持される理由は、まさにこのバランスにあります。

POD
K4 2.0 左右セット
¥91,300(税込)

 

リガメントは膝の靱帯と同じく、消耗していく

このリガメント(人工腱)は、実際の靱帯と同じく繊維を束ねてできているため“使えば消耗する”パーツです。膝を曲げ伸ばしするたびに繊維がわずかに伸縮し、微細なひずみが蓄積していきます。新品時は乳白色で弾力がありしなやかに復元しますが、長期間使用すると繊維がささくれてくることがあります。これは素材の内部で繊維が分離し始めているサインです。ヒンジカバーが透明になっているため、このリガメントがささくれているかどうか、チェックすることができます。

放置すると一気に切断し、上下フレームが分離してしまうこともあります。レースの現場では「気づかぬうちにリガメントが切れていた」というケースも珍しくありません。あまり知られていないことですが、この上下フレームはPODニーブレイスの構造上リガメントだけでつながっているのです。

PODでは交換用のリガメントキットが用意されており、ユーザー自身でも点検・交換が可能です。ブレースを分解し、リガメントを取り外したら、新旧を並べて比較してみるとよく分かります。劣化したものはクセがつき、表面がざらついています。ただ、この3年使ったリガメントは正直なところまだ使える劣化度でした。

交換はとても簡単。リガメントの両端にあるヘキサゴンボルトを外して交換するだけです。ちなみにこのリガメントを留めているボルトは汎用のものではありません。ダートバイクプラスでも頻繁に問い合わせのある部品なのですが、単体では売っていないのでリガメントキットについてくる新品に交換しても、余ったボルトを保管しておくといいでしょう。

上がリガメントを新品に交換したニーブレイス、下が3年リガメントを使い込んだニーブレイス

リガメントを交換すると、ニーブレイスの伸展方向に対してハリが出ました。新品同様のスムーズな動きになります。

ヒンジ部分もレールが削れていないかチェック。ニーブレイスのヒンジは大きなガタがあってはいけません。

また、リガメントを接続するヒンジや、カフ、パッドなどありとあらゆる補修パーツがPODからラインナップされています。強固なグラスファイバー製(K8はカーボン製)のフレームが万が一にも破損しない限り、永遠に使い続けられるというわけです。

 

ニーブレイスは左右ベルトでしっかり締め上げて

リガメントを交換しても、正しく装着されてなければ性能は発揮できません。PODの構造は、ヒンジ軸が膝関節の中心と重なることで初めて正しく機能します。位置がずれると、人工腱が本来とは異なる方向に引かれ、力の逃げ方が変わってしまうし、稼動する時に正しくフレームが追随しないといけません。

まずはパッド位置を整え、膝皿の中心とヒンジの軸をまっすぐ合わせます。上下フレームが脚のラインに自然に沿っているかを確認し、バンドに書かれている番号順に軽く仮留めします。ここで重要なのが、最後の締め方です。PODのストラップは片側から引くだけでなく、左右から同時に引いて締める構造になっています。これにより、膝を中心に均等なテンションがかかり、ブレースがねじれずに固定されます。ここも、バンドに書かれている番号順に締めていってください。

片側だけで締めると、見た目は固定されていても実際にはブレースが斜めに傾き、ヒンジ軸がずれたまま装着されていたり、締め上げる力が足りないことがあります。うっ血するほど締め上げる必要はありませんが、固定力が足りず、保護性能を発揮できていないライダーも散見されます。ヒンジがスムーズに動き、膝と同じ軌道を描いていれば正しく装着できています。

人工腱を守るのは、使う人の意識

PODニーブレースのリガメントは、構造上まさに「もう一つの靱帯」です。これがしなやかに働いてこそ、POD特有の軽さと保護力が両立します。その性能を長く維持するには、定期的な点検と正しい装着が欠かせません。

ライダーにとって、ブレースは装備の一部であると同時に、身体の延長でもあります。レースの前後にリガメントの状態を確認し、汚れを拭き取り、ストラップのテンションを見直す。そんな小さな習慣の積み重ねが、膝を守る最後の一線になりますよ。

 

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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