夜の林道を走ったことがあるライダーなら、あの“漆黒の暗闇”を知っているでしょう。街灯は一切なく、月明かりすら木々に遮られ、視界はヘッドライトだけに頼るしかありません。ところがトレールバイクの純正ライトは、正直なところ明るさが足りない。そんなときの切り札が、ZETA RACING のLEDフォグライトです

ZETA RACING
LED フォグライト
定価(税込) 23,100円
明るく照らす補助灯、フォグライト
この製品は「夜道を広く照らす」ことに特化した小型のLEDユニットです。フォグとは霧という意味。フォグライトという商品名は「霧のための補助灯」に語源があり、このフォグライトもヘッドライトより低い位置に装着することで霧の中の視認性を高めてくれるものではありますが、本来の目的はヘッドライトの光量不足を補助するライトです。消費電力は片側わずか15W。2個使っても30Wに収まり、バッテリーへの負担は最小限に抑えられています。それでいて明るさは1ユニットあたり1500ルーメンを発揮。ホワイト光は6000K、イエロー光は3000Kと、用途に合わせて色を切り替えることができます。

重量は約120gと軽量で、サイズも38×38×53mmとコンパクト。車体のシルエットを崩さないデザインながら、堅牢なアルミニウム合金ボディとステンレス製ステーで振動や衝撃に耐えます。内部には冷却ファンを搭載し、高温時でも輝度低下やユニット破損を防ぐ仕組みを持っています。さらにIP66の防塵防水性能を備え、レンズは耐候性の高いアクリル樹脂。林道や雨天走行といった過酷な環境下でも安心して使える仕様になっています。
ハイ/ロー切り替え機能も搭載されているのがユニーク。通常はハイ=ホワイト、ロー=イエローの設定になっていますが、ボディの上下を変えることで逆配置も可能です。市街地での対向車への配慮や、雨天・霧での視認性確保など、状況に応じた柔軟な使い分けが可能です。
セットには本体2基、専用ステー、コントロールユニット、オンオフスイッチ、電源ハーネス、各種ボルト・ナット類、さらに3サイズの六角レンチまで含まれており、必要なものは一通り揃っています。車種専用の設計でボルトオン装着が可能なので、基本的には追加工なしで取り付けられるのも魅力です。
林道/街中での実走セッティング

セロー純正ヘッドライト・ハイビーム

ハイビーム+フォグライト
実際にヤマハセロー250に装着して北海道の長い長い林道に入ってみました。たまたま取材の機会を得たのですが、熊の出没情報が多いためとても恐怖感が強く、試しにヘッドライトだけで林道に入ってみると心臓がバクバクして走りづらいことこの上ありませんでした。すかさずフォグライトをオンにすると、その差は一目瞭然。フォグライトをヘッドライトのハイビームと同じ高さに合わせ、横方向にワイドに開いたセッティングにすると、これまで闇に隠れていた路肩やカーブの先が浮かび上がります。夜の林道を走るときに常に付きまとう「先の見えない不安」がぐっと減り、安心して走れるようになりました。バイクを安全に走らせる上で最も大事なのは、精神的にリラックスすることだと思います。そういう意味で、フォグライトはどんな装備よりも安全性を高めてくれる装備かもしれません。

フォグライトを中央に寄せたセッティング
ただし、セロー純正のライトが暗いため、フォグが明るすぎて中央部が逆に暗く感じることもありました。これが気になる方は照射角を狭め、純正ライトを補うように中央をしっかり照らす設定にした方が走りやすく感じるでしょう。林道では「広く照らす」か「狭く集中する」かをシーンに応じて切り替えるのがコツです。

フォグライトを下向きにして右側を左に寄せたセッティング
街乗りで常用する場合は工夫が必要です。ロービームよりも少し低い位置に光軸を合わせ、右側のフォグをわずかに内向きに振ることで、対向車や歩行者への眩惑を防ぐことができます。とはいえ、街灯が十分にある都心部ではサブライトのメリットは薄く、むしろ明るすぎて迷惑になるケースもあります。そうした環境ではオフにしてしまうのが正しい使い方だと感じました。

イエローフォグライト
このフォグライトの面白い点は、黄色と白を切り替えられることです。実際に雨の日に黄色を試したところ、白だと濡れた路面に反射して眩しく感じるようなシーンで、黄色の方が目が疲れにくく感じました。科学的にどのようなな差があるのかは分かりませんが、実走ではたしかに「見やすい」と体感できる場面があります。雨天走行が多いライダーは、黄色をハイ側に設定し、光軸を少し落としたセッティングが有効だと思います。
装着時のノウハウ

脇のヘキサゴンボルト2本で留める
取り付けについては一部注意点があります。このライトは角度調整がしやすい2本ボルト構造になっていますが、その反面、振動で緩みやすい傾向があります。長距離のオフロードを走るなら、ネジロック剤でしっかり固定しておくと安心です。

SIGNALのヒューズから電源を取り出して+とつなぎ、ーは車体にアースさせました
また、配線については年式による違いがあります。最新型のセロー250であればテールランプの配線に専用カプラーを割り込ませるだけで装着可能ですが、旧型はカプラー形状が異なるためそのままでは合いません。しかし本体の消費電力は合計でも30Wと小さいため、10Aヒューズから電源を取れば問題なく動作します。今回テストした旧型セローでは、シグナル用の10Aヒューズから電源を取りました。
ZETA RACING LEDフォグライトは、スペック上は片側15Wで1500ルーメンというコンパクトなライトですが、実際に取り付けてみると夜の林道での安心感は大きく、セローのように純正ライトが暗い車両にとっては安全性を格段に高めてくれる装備でした。ワイドに広げてカーブや路肩を見やすくしたり、狭めて純正の弱点を補ったりと、セッティングの幅も広い。街中では眩惑を防ぐ工夫や消灯も必要ですが、雨天での黄色光の有効性も確認できました。
小型軽量ながら堅牢で、防塵防水、冷却機構まで備えたこのユニットは、オフロード走行に最適な「本気のフォグライト」です。夜間に林道へ向かうライダーや、雨天でも走ることの多いライダーはぜひこの効果を実感してみてほしいです。