ZETA RACINGの定番ハンドガード「アントラーハンドガード」がついにリニューアルされました。進化のポイントを、実戦テストと開発担当の松原氏のコメントとあわせてレポート!
樹脂アントラーハンドガードが抱えていた「割れ」という持病
アントラーハンドガードは、ZETA RACINGが展開するハンドガードのなかでも独特なポジションにある製品です。アルミ製のクローズドガード「アーマーハンドガード」と、ベーシックなオープンハンドガードの中間で、TPU樹脂製で指を守りつつ、ハンドルバーのしなりを殺さない――守りすぎないからこそ手に入る軽快さがキモになります。
実はライドハック編集部・稲垣も、アントラーハンドガードをずっと使い続けてきた一人。ただ、この製品には長年の持病がありました。それは、バーエンド側の取付部に縦の「割り(スリット)」が入っていて、そこをボルトで締め込んでハンドルバーエンドにクランプする構造。これが、強い転倒衝撃を受けるとネジ部分を破損してしまうことがあったのです。だましだまし補修しながら使い続けてきたユーザーは、実は少なくないはずです。

そんな旧モデルが「2」になって帰ってきました。コンセプトは初代と同じで、違うのは、長年の弱点を構造で潰してきたことです。
「大きな変更点としては、今までエンド部分に割りがあってクランプをしていたんですけど、それを無くして、全体的に太くなりました。今まで転倒時などに割り部分のネジ穴などを破損してしまうことがあったんですけども、そういったトラブルを減らすことができました」(松原氏)

割り自体を廃止し、ハンドルバーエンドへの固定方式そのものを変更。クランプで締め付けるのではなく、内部のアンカーの軸で固定し、一定以上の力が加わるとガードが回転して衝撃を逃がす設計です。「割れる前に逃がす」発想を、構造レベルで仕込んだわけです。
手が入っているのはエンド側だけではありません。内側のハンドルクランプ部品もアップデートされ、断面形状が見直されています。

「材質は旧型・新型ともに同じ材質を使用して、形状で破損を防ぐような形を取りました。それと内側のステーは旧型ではひし形のような形だったのが、長方形になって、強度と剛性アップを果たしてます」(松原氏)

外側のアームと内側のクランプを両方とも作り直した、文字通りのフルリニューアル。外と内の接合部分は3か所から取付位置が選べるので、ブレーキホースやワイヤー類を避けてレイアウトしやすいのも、地味に効くポイントです。

ZETA RACING
アントラーハンドガード2
¥11,880(税込)
アーマーハンドガードとの棲み分け。アントラーハンドガードは「指を潰さないため」のもの
ハンドガードを選ぶ際、ZETA RACINGの定番、アルミ製のアーマーハンドガードと迷う人も多いはず。両者は見た目こそ似ているようで、思想がまったく違うので、ここは整理しておきたいところです。
「アーマーハンドガードはアルミ製のハンドガードになりますが、どちらかと言うと『バイクをどれだけ倒しても大丈夫』『どんな地形、岩場だろうがウッズだろうが、どんな物にぶつけてもバイクを壊さない』というコンセプトです。それに対してアントラーハンドガードはもう少し割り切った形で、あくまでも『指を潰さないためのようなハンドガード』ですね」(松原氏)
アントラーハンドガードを使うときに、知っておかないと損する話があります。アントラーハンドガードは「あえて固定力を求めていない」設計だ、ということ。

クラッチマスターの破損を防止してくれる、ローテティングバークランプ
「このガードがですね、どうしても固定力を意図的に求めてないものになりますので、強い衝撃が加わるとズレます。間違いなくズレますし、その時にレバーを守るという役割をあまり果たさないので、ピボットレバーとスリーブの入ったローテティングバークランプを使うことで、レバーやマスター、ホルダーの破損を守ってくれます」(松原氏)

定番、ピボットレバーとの組み合わせが吉
要するに、「レバーが転倒で接地しても、ハンドガードが代わりに守ってくれる」という発想で買うとアテが外れる。レバーはレバーで、衝撃で折れずに逃げる「ピボットレバー」と組み合わせ、ブレーキマスターやクラッチレバーホルダーのクランプには「ローテティングクランプ」を入れて、これも一定以上の力で回転して逃がす、この三段構えで初めて、レバー周りが本当に守られる、というのがダートフリークの推奨セットアップです。

ハードエンデューロ向けのハンドルセットから乗り換えたら、疲労が消えた
というわけで僕、ライドハック編集部・稲垣がアントラーハンドガード2をJNCC木島平で実戦投入してきました。
僕は長くアントラーハンドガードを使ってきたんですが、バーエンド部分が壊れることがあって、補修しながらだましだまし使ってきた経緯があります。

PHOTO/JNCC
ただ、ハードエンデューロのようなステージでは、僕みたいな下手なライダーはさすがにアントラーハンドガードでは壊しそうなので、アルミ芯入りのアーマーハンドガードを、サイドタイプのマウントでクランプ部にガッチリ固定したセットアップで参戦していました。

ハードエンデューロ用セットアップ
問題はその後で、付け替えが面倒くさくなって、そのままアーマーハンドガードをクロスカントリーやモトクロスにも投入していたら、剛性が高すぎて手の外側が疲れてしまう症状に悩まされたのです。特に小指付け根あたりがレース前半に張ってきて、序盤のペースがまったく上がらない。『早くアントラーハンドガードに戻したい』と切実に思っていたところに、アントラーハンドガード2発売の話が出てきました。
実際、JNCC木島平では5回以上こけたんですが、ハンドガードが上を向いてしまったのは1回だけ。しかも手でさっと叩けば元の位置に戻ってくれる。『これだよこれ』と思いましたね。設計どおり『回って逃げて、戻して、また使える』を実演してくれた感じです。もちろん割れることは一切ありませんでした。
そして何より、樹脂製のハンドガードはハンドル周りの剛性を必要以上に高めないので、ライディングフィールが軽くて気持ちいい。アーマー+アルミ芯時代に感じていた、あの腕の張りがだいぶ消えました。

ちゃんとこけました
軽量で、しなりを殺さず、割れにくい。旧アントラーハンドガードの美点はそのままに、最大の弱点だった「割れ」を、材質に頼らず形状の見直しだけで潰してきた一本。¥11,880(税込)という手の届きやすい価格も含めて、JNCCやJECといったクロスカントリー〜エンデューロ系のレースを走るライダーには、ど真ん中のアップデートだと言えます。
なお、トレール車に装着する場合は、まわりのパーツとの取付スペースに余裕があるかを事前に確認してください。なお、アンカーの径が合わないため鉄製ハンドルバーには取り付けられません。対応するのはアルミ製ハンドルバーで、内径13.5mm〜16mmが目安です。
「指を守る」軽量ハンドガードを探しているなら、ピボットレバー+ローテティングバークランプ+アントラーハンドガード2の三点セットを、ぜひ装備の見直し候補に加えてみてください。