チェーンの脱落は、オフロード走行で起こりやすいトラブルの代表格です。これを構造的に防いでくれるのが「チェーンガイド」と呼ばれるパーツ。ここではZETA RACINGの代表的な3製品を軸に、なぜチェーンガイドが必要なのか、そして自分のバイクにはどんなものが用意されているのかを整理していきます
なぜ、オフロードではチェーンが外れやすいのか
そもそもなぜチェーンは外れるのか。仕組みから押さえておくと、製品選びの判断が一気に楽になります。

オンロードでは、チェーンはほぼ前後方向にだけ力がかかります。ところがオフロードでは、深い轍、岩、木の根などに駆動系がぶつかることによって、チェーンに横方向の力がかかる場面が頻発します。ここで仕事をするのが、スイングアームに付いている「チェーンガイド」と呼ばれるパーツ。チェーンが横にズレないように内側から押さえてくれる、ガードレールのようなパーツです。
チェーンガイドはレーサーであれば純正でも付いているのが普通。トレールモデルにはついていないこともあります。また、レーサーでも内側に樹脂のスライダー、外側にアルミの板を組み合わせた構造になっているものが多いのですが、強い横方向の衝撃を受けると外側の金属プレートが曲がり、その内側の樹脂も曲がったまま戻らなくなってしまう。結果、チェーンを押さえる「ガードレール」がむしろチェーンを横方向に押し続けてしまい、脱落する――ということが起きてしまいます。だからこそ、オフロードを攻めるなら、チェーンガイドを”ちゃんとしたもの”に入れ替える価値があるわけです。
レーサー/軽量トレール向け
ZETA RACINGチェーンガイドの基本思想
激しくぶつける可能性が高いレーサー向けチェーンガイドに共通する設計の柱はシンプルで、上側(メインプレート)は曲がらない剛性を持たせ、下側(スライダー部分)は曲がってもすぐ元に戻るPU樹脂で作っています。「曲がっても自分で戻る」性質を持つので、岩にヒットしても次の瞬間には元の位置に戻ってチェーンを押さえてくれます。

ZETA RACING
チェーンガイド
¥6,490(税込)~
ラインナップの中で基本となるのが、このチェーンガイド。レーサー(ヤマハ YZ、カワサキ KX、ホンダ CRF、KTM SX/EXC、ハスクバーナTC/FC/TE/FEなど)はもちろん、ホンダ CRF250L、スズキ DR-Z4S、カワサキ KLX230といった本格オフロードを意識したトレール車両にも対応しています。
構造はシンプルで、車種専用設計のジュラルミンプレートに、PU樹脂製の3Dデザインスライダーを組み合わせた形。チェーンスライダー下側はV字形状になっていて、深いワダチを走る際の路面との接触面積を最小限に減らす工夫もされています。進行方向からの衝撃をいなすために大きく角度をつけた3Dデザインも、地味に効くポイントです。スライダーは別途安価で交換が可能です。
対応するリヤスプロケット(チェーンが噛む後輪側のギア)の最大丁数は、レーサー用途で52丁まで、トレール装着時は48丁までを目安に設計。スプロケットを純正から大きく変えている場合は、事前に対応丁数を確認しておくのが安心です。
純正と置き換えるだけのボルトオンなので、初めてのカスタムとしてもハードルは低め。最初の一発目に手を入れるパーツとしては、かなり優秀な選択肢です。

JECトップライダー馬場亮太のチェーンガイドです。使い込まれていますが、変形していないことがうかがえますね。なお樹脂部分は別途交換が可能なのもうれしいポイント
セロー250専用、デュラブル チェーンガイド SEROW250

ZETA RACING
デュラブル チェーンガイド SEROW250
¥10,780(税込)

セロー250は、林道ツーリングの定番として愛され続けてきた一方で、純正のチェーンガイドが非常に簡素という弱点を持っています。具体的には、樹脂が一枚付いているだけ。そこそこいい仕事をするのですが、ガレ場などでもう少し頑丈さが欲しいところ。
そこでZETA RACINGは、レーサー用とはまったく違うアプローチを取りました。チェーンを囲う本格的なガイドを「足す」設計です。プレートは7000系アルミ合金を6mm厚で削り出し、内側にPOM製のガイドブロックを装着して、チェーンを上下から押さえる構造になっています。

ただし、ここで問題がひとつ。セロー250はもともと一枚板を留めているだけの設計なので、スイングアーム側のステー(取付台座)がそれほど強くありません。そこにいきなり厚いアルミプレートを付けると、横からの衝撃でステー側が内側(ホイール側)に曲がってしまうおそれがあります。これを防ぐために、ZETA RACINGはスイングアームを内側から支える「ブレース」(つっかえ板のような補強部品)を一体で組んでいます。チェーンガイドが頑丈になっても、付け根が負けたら意味がないという発想がポイントです。
また、最低地上高も純正より高く設定されていて、ヒルクライムやガレ場で岩に当たるリスクを減らしています。対応リヤスプロケットは最大50丁(ガイドブロック装着時)です。さらに、ガイドブロックを取り外せばストリートユース向けの軽量セッティングにもできるので、林道ツーリングメインのライダーから、トライアルごっこに取り組む人まで、幅広く使えます。
デュラブルチェーンガイド WR125R

ZETA RACING
デュラブルチェーンガイド WR125R
¥16,500(税込)
新型WR125Rは、小排気量本格トレールとして人気の高い一台。ただ、こちらはチェーンガイドがついておらず、チェーンガイドを固定するためのステーそのものがありません。
ZETA RACINGがこの車両に対して用意した答えが、スイングアームを直接クランプで挟み込んで、そこにチェーンガイドを生やすという構造。専用クランプでスイングアームに強固に固定するため、ステーがない車両でも本格的なガイド性能を後付けできます。
プレートは6mm厚のアルミニウム合金、ガイドブロックは摩擦抵抗の少ないPOM製。重量は530gと、樹脂タイプより少し重いものの、その分の堅牢さがあります。対応リヤスプロケットは56T〜62Tと幅広く設定されており、純正の59Tはもちろん、ロングツーリング用にギア比を変えている個体にも対応可能。
このモデルにはもうひとつ嬉しい設計があって、転倒時に手やブーツがチェーン側に巻き込まれるのを防止する形状になっています。WR125Rでハードなオフロードに踏み込んでいくなら、安全装備としても効いてくるでしょう。
使いこなしのコツ
製品を取り付けたあと、もうひと押し性能を引き出すための調整ポイントが2つあります。

こちらは馬場亮太の乗るYZ250FX。スプロケットを純正の50Tから51Tにしていますが、ZETA RACINGのチェーンガイドが装着できます
1つめは、リヤスプロケットの丁数。レーサーなら52丁あたりまでは想定内ですが、トレール車はもっとシビアで、純正からプラス3〜4丁が目安。たとえばCRF250Lの純正が40丁のところ、いきなり50丁に変えてしまうとチェーンガイドと干渉する可能性があります。もし入らなかった場合は、チェーンを1コマ伸ばすことで解決するケースもあるので、装着前に一度確認しておくと無駄足を踏まずに済みます。53丁を超えるような大幅変更を狙うなら、リヤではなくフロントスプロケットでギア比を調整するのが基本です。
2つめはスライダーのローラー位置。セロー用のデュラブルチェーンガイドは樹脂ローラーを上下にスライドできるようになっています。フリクション(抵抗)を極力減らしたいなら、チェーンに当たる量を減らすように下に。一方で、チェーンの保持能力を最優先したいなら上げると良いでしょう。なお、ガレ場やウッズなど、外れるリスクの高い環境を走るなら、フリクションを気にせず上げ気味でセットする方が安心です。
自分の車種に用意されている一本を装着する
レーサー、CRF250L、DR-Z4S、KLX230、KTM SX/EXC、YZ系のように、スイングアーム側にしっかりとしたステーがある車両には、樹脂スライダーのチェーンガイドをセロー250には、ブレース機能で付け根まで補強するデュラブル チェーンガイド SEROW250を。WR125Rのようにステーそのものがない車両には、スイングアームを直接クランプするデュラブルチェーンガイド WR125Rを装着する。車両それぞれの事情にあわせて最適な構造があてがわれているので、自分の車種に対応する一本をそのまま装着するだけで、純正のチェーン外れ問題は大きく改善します。
なお、ZETA RACINGはここで挙げた3製品以外にも、テネレやアフリカツインといったアドベンチャー系向けに「デュラブルチェーンガイド」もラインナップしています。気になる人は、ダートフリークの公式サイトで自分のバイクを検索してみてください。
ガレ場でチェーンが外れて押し歩き、なんてシーンを未然に潰せることは、走りの安心感に直結します。オフロードに本気で踏み込んだら、一度自分のバイクの足元を見直してみてください。