バイク メンテナンス

乗りっぱなしのバイクには何が起きているのか。プロの目による徹底メンテ総ざらい

1年半かけて77時間、かなりいい加減に乗ってきたライドハック編集部の一台を、リッジサイクルの馬庭隼人さんのもとへ持ち込んで、頭からお尻までダメ出ししてもらいました

ノーメンテの一台を、作業台に載せる

正直に告白します。編集部のヤマハYZ250FXは、かなりいい加減に乗られてきました。レースには毎月のように持ち込むのに、注油と泥落としくらいで、消耗パーツを腰を据えて見直したことはほとんどありません。走行時間を確認したら、1年半で77時間。それなりに走り込んだ一台です。

 

さすがにこれはまずい、ということで神奈川県のオフロードバイク専門ショップリッジサイクルに車輌を持ち込みました。診てくれるのは、リッジサイクル店長の馬庭隼人さん。「ここまずいでしょう」というポイントを片っ端から挙げてもらおう、という趣旨です。面白おかしくダメ出ししてもらう覚悟でのスタートでした。

 

結果は、想像以上でした。自分では「まあ走れているし」で済ませていた不調が、プロの手にかかると次々に原因まで突き止められていきます。最近どうもハンドルまわりが妙に重い、なぜか曲がりにくい、やたらと熱い。そんな漠然とした違和感の答えが、この日ぜんぶ出てしまったのです。

曲がったチェーンガイドが「なんか重い」の理由

いちばん最初に馬庭さんの手が止まったのが、チェーンスライダーとチェーンガイドでした。

「チェーンガイドが曲がっちゃってますね。結構よくあることですよ」(リッジサイクル・馬庭隼人さん)

 

覗き込むと、確かにアルミ製のガイドがひし形に変形しています。実際、後輪を手で回してみると、スムーズに回らない。曲がったガイドまわりが駆動の抵抗になっていたわけです。「妙に重い」の正体のひとつが、これでした。さらにチェーンガイド本体を見てもらうと、

「スライダーも、もう中身がほとんど残っていませんね。本来はこのくらいの高さがあるんですが、3分の2ほど削れています」(馬庭さん)

 

ここで思わず苦笑いしました。というのも、少し前にZETA RACINGのチェーンガイドを紹介する記事を書いたばかりだったのです。「純正は転倒で曲がるから、ZETA RACINGの丈夫なものへ」と。その舌の根も乾かぬうちに、自分の車輌がまさに教科書どおりに曲がっていたわけです。

 

というわけで、曲がった純正チェーンガイドは、ZETA RACINGのチェーンガイドへ交換することにしました。打ち付けても柔軟に形が戻る樹脂製で、車種ごとの専用設計。YZ250FXにはボルトオンで、純正のようにチェーンラインを狂わせる心配がぐっと減ります。馬庭さん自身も自分の車輌にはZETA RACINGを入れているとのこと。

ZETA
チェーンガイド
https://www.dirtfreak.co.jp/products/detail/093F6411-4547836331411/
¥6,930(税込)

 

 

なお、ガイドが曲がって抵抗になっていたぶん、チェーンとスプロケットも巻き添えを食っていました。チェーンはスライダーに擦れてしまってもう限界。チェーンが傷んだ分、スプロケットも歯が減っているかも、と思いきやそこまでではありませんでした。耐久性あるスチール製のDRCのデュラ リヤスプロケットを使っていたからかもしれません。

DRC
デュラ リヤスプロケット
https://www.dirtfreak.co.jp/products/detail/025D6255-4547836118715/
¥6,897(税込)

ブレーキは洗車時にコツがあります

 

続いてブレーキ。ここで馬庭さんが繰り返し口にしていたのが、パッドの「清掃」でした。

「ブレーキは、毎回清掃したいところです。洗車のときにキャリパーを押すことで少し隙間を作ってあげると、ぐっと洗いやすくなりますよ」(馬庭さん)

 

キャリパーとパッドの隙間には、走るたびに泥や砂が入り込みます。これを放っておくと、鳴きや片減り、そしてタッチの悪化につながる。効きを語る前に、まず清掃と点検ありき、というわけです。実際このYZ250FXも、以前リアブレーキがレース中に効かなくなったことがあります。原因はバンジョーボルトの緩みと、そこからのフルード滲みでした。踏むたびに力がかかる場所だけに、増し締めとフルードのチェックはこまめにやっておきたいところです。

ブレーキパッドは…ありませんね。パッドのおすすめは、ZETA RACINGのジグラムパッド ダートシンタード。シンタード(焼結金属)系のコンパウンドで、泥・水・砂を噛みやすいオフロードのコンディションでも、初期からしっかり食いつきます。踏んだ分だけリニアに立ち上がるので、ガレ場の下りでリアを丁寧に引きずるような(?)コントロールがしやすいのが持ち味。

ZETA
ジグラムパッド ダートシンタード(フロント用)
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¥5,500(税込)

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ジグラムパッド ダートシンタード(リア用)
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¥5,500(税込)

 

 

ちなみにこのYZ250FX、フロントブレーキも一度ディスクを曲げて緊急修理した過去があります。ディスクは一度歪むと制動力が一気に落ちる要注意パーツ。ガードもセットで考えたいところです。ZETA RACINGのプロ フロントディスクガードは、全日本モトクロスのファクトリーの意見をフィードバックして開発された形状で、轍に引っかかりにくく、キャリパーまで広くカバー。

ZETA
プロ フロントディスクガード
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¥7,590(税込)

 

 

エアフィルターは、バルブを静かに削っていく

打ち明けると、このYZ250FXのエアフィルター、ホコリの多かった1レースを終えてから掃除していませんでした。外して見せると、我ながらすさまじい汚れ具合です。ここで馬庭さんがショップの棚から取り出したのが、傷んだ吸気バルブでした。

「傘のところが丸くなっているでしょう。ヤマハはエアクリーナーを外すとき、この縁をちゃんと掃除しておかないと、砂が落ちてエンジンの中に入ってしまうんです。そうなると、この吸気バルブが砂で少しずつ削れていく」(馬庭さん)

フィルターを外す前に縁を掃除することが大事。ボックスの中にゴミが落ちてしまいます

つまりフィルターの管理をサボることは、じわじわとエンジンの内部を削っていることに等しい。パワーやフィーリングの前に、機械としての寿命に直結する話です。何気なく「妙に調子出ないな」と思っていたのも、こういうところが効いていたのかもしれません。

裏側にゴミが付着していたら危険信号。リザルトを狙いたいならヘッドを開けて点検したいところです

「いちばん重要なのは、オイルとフィルターの管理だと思います。楽なのは、フィルターを何枚か持っておいて、洗って乾かす時間を待たずに交換してしまうこと」(馬庭さん)

 

馬庭さんはシーズンの頭にフィルターをまとめて買い込み、1年でそれを使い切るという徹底ぶり。1枚あたりのコストなど、エンジンを一基傷めることを思えば安いもの、という理屈です。耳が痛い。この一台の“いい加減さ”がいちばん出ていたのは、ここだったのかもしれません。

チェーン、ブレーキ、エアフィルター。目立つところを片づけてから、馬庭さんの手はいよいよ細かい部分へ。車体をひと撫でしながら、馬庭さんが何度も口にしたのが増し締めでした。

「基本は増し締めですね。サブフレームやマフラーまわりは、走っているうちにどうしても緩んできます」(馬庭さん)

実際、この日もマフラーのボルトが緩んでいて、しかも本来とは違うボルトが使われている箇所や、ワッシャーが入っていない箇所まで見つかりました。マフラーが脱落すれば一発で失格。そして地味に怖いのがアース線のボルト。ここが緩むと、いざというときにエンジンがかからない、という致命傷になり得ます。ボルトのトルク管理はプロが仕上げたマシンと大きく差が出るポイントですね。

外装は「毎回外す」

洗車のたびに外装を外すことを、馬庭さんは強く勧めます。

「外装は基本的に外したほうがいいですよ。外すたびに、新しい発見が色々ありますから」(馬庭さん)

タンクを浮かせて前半分まで洗いながら、むき出しになった配線が奥までしっかり刺さっているか、被覆が切れていないかを目視する。転倒の多いオフロード車ほど、電装トラブルは洗車ついでのひと手間で未然に防げる、というわけです。ちなみに私のYZ250FXは、シュラウドの爪がズレて変形していました。転倒のたびに少しずつ歪んでいたようで、これも外してみて初めて気づいたところです。

足まわりは「一本外して、目安にする」

リンクまわりは、全部バラさずに効率よく状態を掴むコツを教わりました。

「リンクを全部バラすのは手間なので、まずはここの一本だけ外してみるんです。ここが大丈夫なら、たいてい他も大丈夫。ただ、固着して外れなくなると本当に厄介なので、年に一度は点検してほしいですね」(馬庭さん)

続いてタイヤを浮かせてハンドルを切ると、ステアリングステムのあたりからコリコリと引っかかる感触。ステムベアリングにガタが出はじめているサインです。フロントのホイールベアリング自体は大丈夫でしたが、「なんとなく曲がりにくい」「妙に落ち着かない」の一因は、こういう足まわりの小さなガタの積み重ねだったりします。

サスペンションは「漏れ」と「凹み」を見る

サスペンションは、まず漏れの有無。そして意外な見どころが、アウターチューブの凹みでした。

「凹んでいても、漏れはしないんです。ただ、そこで動きが引っかかって渋くなる。しかも一度凹むと、そこはまた弱くなってしまうんですよね」(馬庭さん)

 

ハードエンデューロを走るライダーには、アウターチューブを曲げてしまっている人も少なくないとのこと。オイル漏れのようにわかりやすい症状が出ないぶん、見落とされがちなポイントです。

アウターチューブのボトム部についているリングも削れていないか注意

ラジエーター、オイル滲み、フレーム

やたら熱いと思っていたラジエーターは、覗いてみると右側がこれでもかというくらいに変形していました。右側を打った記憶はないのに、です。今のバイクは倒してもそうそう壊れないから、いつの間にか勝手に頑丈だと思い込んでいたんですね。素直にラジエーターガードを入れておけばよかった、と反省しきり。

エンジンまわりには、オイルの滲みがありました。馬庭さんいわく、ガスケットが怪しいとのこと。思い当たる節はあって、以前クラッチを開けたとき、ガスケットを換えずに同じものを使い回していたのです。クラッチ側のちょっとしたオイル漏れなら軽傷ですが、クランクケースのヒビだったりすると重傷ですね。

 

最後にフレーム。

「意外とフレームにクラックが入ることがあるみたいなんですよ。日本ではあまり聞かないですけどね」(馬庭さん)

 

すぐどうこうという話ではありませんが、頭の片隅に置いて、洗車のときにでも溶接まわりを眺めておくといい。そんな締めくくりでした。オフシーズンに一度は全部バラして点検しようね、という当たり前を、当たり前にやることの大切さを、この日はとことん突きつけられました。

放置していた足元こそ、プロの目で

派手なパワーアップではありません。いい加減に乗ってきたマシンほど、手を入れたときの効果がはっきり出る場所です。しかも今回のように、1個の不具合(曲がったチェーンガイド)が駆動抵抗やチェーン・スプロケの摩耗まで影響することがある。

 

ZETA RACINGはこうした消耗・保護パーツを車種別に細かく用意しているので、YZ250FXなら基本ボルトオンで、確実なリフレッシュができます。「まだ走れているから」で見て見ぬふりをしているバイクがあったら、一度プロの目で総点検してみてはいかがでしょう。次のレースが、少しだけ怖くなくなります。

 

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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