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メカのウンチク話 速く安全に気持ちよく走るためのセッティング 〇キャブセッティング・基礎編#3

5秒速くなれる!?「メカチク」がWEBで復刻!

本記事の内容は、「ダートクール2003 No.5」掲載の「読むだけで5秒速くなれる メカのウンチク話」を、2025年現在の情報に合わせて一部注釈や文章、図の修正を行い掲載しています。

■2003年#05より

速く、そして楽しく走るために欠かせないメカ知識とモトクロッサーの正しい整備方法を紹介するメカのウンチク話。レジェンドメカ小菅登氏の、タメになるウンチク話をたっぷり紹介いたします。

速く安全に気持ち良く走るためのセッティング - キャブセッティング・基礎編

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● 各ジェットの交換方法●

ここでは各ジェットの交換、調整方法について説明しよう。
近年市販されてる2ストモトクロッサーは、キャブレターを外すことなく傾けるだけでメインジェットとジェットニードルの交換作業ができる。
また125モトクロッサーの多くに採用されているミクニTMXxはフロート室下部のドレンボルトを外すと、メインジェットと同様にスロージェットも交換できる。
エアスクリューだけはそのまま外部からドライバーで調整できる。

以上がキャブセッティングの作業箇所だが、作業そのものは簡単だ。
むしろ経験が必要なのは気象条件やコース状況から適正ジェットを先読みすることである。

なお実際にキャブセッティングをする際には、点火プラグやエアクリーナーエレメントを掃除し、ガソリンやオイルもいつもと同じ銘柄/混合比であること。
エンジン内はもちろんクラッチやタイヤなども、きちんと整備されている方が望ましいことは言うまでもない。

◎作業準備

メインジェットやスロージェット、またはジェットニードルの作業は一部分解を含むので、最初にフューエルコックをOFFにしてから始めること。
またエアベントチューブなどの取り回しも作業前から確認しておくと、あとの作業が楽になる。
ジェット類を交換する場合、キャブレターの上部か底面のいずれか作業する側を、自分側に傾けなければいけない。
その際、スロットルケーブルに余裕がないと引っ掛かって傾けることができない。
そこでもあずはハンドルバーを左にきってスロットルケーブルに余裕を持たせる。

次にキャブレターの前後を止めているバンドを緩める。
両手でキャブレターの上下を支え、作業する側を手前に傾ける。
さらに必要ならフューエルホースを外す。

・メインジェットとスロージェット

キャブレター底部が手前側になるように傾ける。
もし邪魔ならドライブスプロケットカバーを外す。
残留ガソリンがこぼれるのでウエスなどを下に敷いてから、フロート室のドレンボルトを外す。

ドレンボルトを外すと、中にメインジェットが見える。
メインジェットは6㎜のレンチで外すが、真鍮製なのでナメやすい。
できれば力の入り具合が分かりやすいソケット式のドライバーを、ジェット専用として用意したい。

下の写真でメインジェットの隣に見えるのがスロージェット。
こちらは細身のマイナスドライバーで外せる。
同じく真鍮製なので、外す時も装着する時も慎重に作業すること。

ドレンボルトを開けてもスロージェットが見えない場合は、フロート室を外す。
ネジで固定されているがキャブレターについているネジは組み立てライン都合なのか、高トルクで締まっているものが多い。
初めて外す時にはナメないように慎重に。
フロート室を外せばスロージェットが脱着できる。
ジェットの交換が終わった後は、逆の手順で組み付ける。

・ジェットニードル

キャブレター上部が手前側になるように傾ける。キャブレター上部のネジを外す。

上部のフタごとスロットルバルブを引き出す。スプリングを縮めてカラーを外せば、スロットルバルブ内にジェットニードルを固定する、ケーブルホルダーが見える。
スロットルケーブルはこのケーブルホルダーに引っ掛けられて固定されている。

片手でスロットルバルブを持ち、
残りの手でスプリングを縮めておいてケーブルをできるだけ引き出してつまむ。
そのままケーブルの端を、ケーブルホルダーの切り欠きを潜らせるようにすれば、
スロットルバルブからケーブルが外せる。

ケーブルホルダーはメインジェットと同じ6㎜のレンチで外せるが、
スロットルバルブ内は狭いので細身のジェットドライバーがあればここでも活躍する。
ケーブルホルダーを外し、スロットルバルブを逆さにすればジェットニードルが外れる。

ニードルのクリップを外す時は硬い板状のもの(例えば工具箱)にクリップの開口側を押し付けて外す。
この時、クリップが飛んでいかないように指で押さえておくこと。

取り付ける時も同じ方法で、クリップ開口部をニードルに合わせ、反対側を硬い物に押し付けて入れる。
なおクリップを紛失するとそれだけで走れなくなる。
作業の前に必ずスペアを用意しておくことを勧める。

以上のようにしてニードル交換、またはクリップ段数を変更したら、逆の手順で組み付ける。

組み付け時に注意する点は、スプリングの下端に入るプラスチックのカラーの凸部を合わせて装着すること。
またスロットルバルブをキャブレター本体に挿入する時には、ニードルを曲げないようにそっと優しく入れる。
さらにジェットニードルが、キチンとメインのノズルに収まっているかどうか確認すること。
完全に入り切らずに、途中で止まっている場合もあるので注意。
上部のフタを締める時も、ゆっくり確認しながら締めること。

◎作業後

作業が終わったら慌てずに、必ずエンジンをかける前にスロットルケーブルが絡んでいないか、スロットルグリップを離すとちゃんと戻るかを確認すること。

またフューエルホースを取り付け、コックをオンにした後でバイクを1度傾けるとオーバーフローチューブからガソリンがこぼれ、フロート室にガソリンが満たされたことが確認できる。

◎エアスクリュー

エアスクリューは外部からドライバーで調整できる。
したがってこれだけは、エンジンをかけた状態でもセッティングできる。

エアスクリューのセッティング値は、全閉からの開け戻し回転数で表される。
理想的な調整範囲は1回転から2回転戻しの間。
できればレース当日に、どちらにも調整幅が大きく取れるように事前にスロージェットを変更し、
1回転半戻しで。適正値にしておきたい。

 

[#04へ続く]

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【クレジット】
Text: Dirt Cool
Illustration: Takuma Kitajima
Special Thanks: Noboru Kosuge

※転載不可

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DBPオンライン店長 鈴木

趣味が高じてオフロード専門店のダートバイクプラスに転職して6年目。オフロードをメインに、モトコンポからリッターマシンまでこれまでに30台のバイクを所有してきました。好きなトレールバイクはTT250R、現在の愛車はKTM350XC-F。好きなツーリングスポットは十和田湖(青森)、諏訪湖・木崎湖(長野)

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